90年代を代表する傑作でしょう。
★★★★★
洗練、発展の頂点と無縁ではおれない倦怠、狂気。
1コマ1コマにアートとしての独立性を持たせようとする、松本大洋先生の若々しさ。
エゴン・シーレを思わせる、スマートな苦悩。
時代の空気、閉塞感をリングに持ち込むことで、凡庸なスポーツ漫画とは一線を画す思想本のような感触をこしらえた
90年代の傑作漫画であり、20年後のあしたのジョーである。
松本大洋の最高傑作
★★★★★
何十回読み直したかわかりません。
ミドルのベルトを守り続けてきた伝説のボクサー:「ゼロ」こと五島雅は自らの老いを感じていた。しかし、家族も友達もいない彼の生活・世界には戦うことしかない。
そこへトラビス・バルという若い天才ボクサーが現れてくる。彼は「国家」「スポンサー」「家族」等を背負い、初めは大人しく周りの大人達に従っている。
試合が始まり、セコンドの言いつけを守り続けてきたトラビスは、次第に「何かを伝えようとする」五島のボクシングに巻き込まれていく。
もっと高く、もっと高く、「天才」しかわからない世界に二人は踏み込んでいく。その結末は....。
選ばれたものにしかわからない快楽、「世界戦となればこれはりっぱなビジネスですよ」とうそぶくオーナーを初めとする周りの普通の人々からまったく理解されない孤独、肉体の限界と自らの精神の齟齬に解決を見出せない悩み。
何度読んでも新しい発見や考えるヒントが得られます。
松本大洋の最高傑作であると同時に、マンガ全体で見ても最高水準の一つと思います。
孤独な天才
★★★★★
最初のうちは乾いた質感で淡々と話が進んでいくのですが、
最後の試合の場面はかなりの丹念に描いています。
何とも言えない、ほろ苦く切ないラスト、、、
天才のたどる道を表現しているのかもしれません。
才能を開花させるだけが人の幸せではない、
それでも突き進まずにはいられない悲しい人の性。
魂にドスンと一発パンチが欲しい方には
★★★★★
★5つは少し甘めにも感じるが、読み終わった時「あしたのジョー」以来だな・・・みたいな
感覚に囚われたのも事実。
単純にボクシングのストーリー物を楽しみたければ「はじめの一歩」等の方が何倍も良いと思
います。
ただ魂にドスンと一発パンチが欲しい方には断然おススメです。
『鉄コン』の原型がここにあります
★★★★☆
圧倒的な強さで長期王座を築き、「リングの上でしか生きられない男」とまで呼ばれる最強のチャンピオン“ゼロ”。
余りに長いその“王朝”に、ファンも、関係者も、そして王者自身も疲れ、倦みはじめていた時、海の向こうから挑戦者があらわれる。
対戦相手をリングで殺したという若き力に、ゼロは“譲位”の時を予感しつつリングへと向かう…。
『鉄コン筋クリート』の松本大洋がブレイク直前に発表した中篇ですが、ここには既に大ヒット作『鉄コン』の原型があります。
“リング→宝町”“挑戦者→ヤクザたち”と読み替えてみる。
では「リングの上でしか生きられない男」ゼロとは?
余り書くとネタバレだけど…私は“ゼロ→クロ”と読みました。
でも、この物語には“シロ”がいない。
これは「シロと出会えなかったクロ」の物語…『鉄コン』と表裏をなす、もう一つの、ダークサイドの、現代の英雄譚です。
『鉄コン』で松本大洋を好きになった方に是非読んでみて欲しい作品です。