欲しがりません、勝つまでは!勝つために生まれてきた荒武者の活躍。
★★★★★
電気機関車ファンなら、戦時中に設計・製造された凸型電機EF13はもちろんご存知と思う。材料を節約するために凸型で作られたボディ、後にEF58の旧車体を利用して箱型ボディに改造され長く使用された。
本書の著者は実際にEF13を運転していた機関士である。車両そのものの客観的解説だけでなく、乗り味や挙動など機関士ならではの記述は興味深い。上巻は戦時中の新製から凸型時代の活躍を解説する。
車体は最小限のスペースの凸型、デッキ板も手摺りも無し、パンタグラフはモハ63形と同じ電車用、安全の要の高速度遮断器も無し、その他電気部品も代用材料ばかり。軽くなってしまった分はコンクリートの死重を積んで補重。戦時中の極限的状況だからこそ、通常では許されないような大胆な省略と代用材の採用が実車で行われた結果、その知見が戦後の技術向上につながった、と著者はEF13を評価する。
上巻ですごいのは戦争直後の時期を中心とした凸型ボディー時代の活躍の写真の数々。フィルムすら不足していた時代、よくこれだけの写真を集めたものと感心。ボンネット側面の点検蓋が開かれて中の補機類が見える写真もある。連結される車両や周辺の僚機もトキ900や戦時型D52など、貴重な写真が豊富。
上巻のラストは、入換え蒸機に押されて工場に入場するパンタを降ろしたEF13。新ボディになってからの活躍は下巻に続く。