B6回顧録の番外編?
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昔、冬になると出てきて活躍する車両に雪カキ車と暖房車があった。前者が今でも一部の私鉄などに現役であるし、JRでもディーゼル機関車に似たようなパーツを付けて活躍しているので、イメージしやすいが、暖房車となるともはや鉄道史の中に埋もれつつある存在である。基本的に冬にだけ、しかも電化された路線の暖房装置を持たない旅客用電機とのみとしか仕事をしていなかった暖房車は、現在では鉄道趣味誌上でも写真が載ることも少なく、ましてその変遷やバリエーションが紹介されることはめったにない。そのような時代にこの暖房車だけをテーマとした1冊の本に出会えることに感謝したい。
「暖房車は機関車の次位に連結」という先入観を持っていた私も本書の表紙写真により列車最後尾に連結されることもあるのだということを初めて知った。
本書は黎明期の暖房車からその終焉期までの歴史、車種、運用などを紹介する。後半では、最後にして最大の暖房車マヌ34が登場。このマヌ34、台枠はトキ900から、ボイラーは明治の輸入蒸機B6を用いており、どのB6から改造されたかも含む車歴簿も載せられている。その意味で同じRM LIBRARYシリーズにある「B6回顧録」の番外編とも言える。
この客車とも貨車とも、また機関車との合いの子とも思える暖房車の記録本は、客貨車ファンを始め、共に働いた旧型電機のファン、蒸機ファンにもお勧めしたい。