痛快だし、ためになる。
★★★★★
「海外ブラックロード」シリーズの最新作です。
著者の嵐よういちは、非常に強烈なキャラが魅力。海外のぼったくりや日本人差別に対して「そこまで言うか」っていうくらいブチキレまくるスタイルの旅行記を書いている作家です。確かに日本人は海外での不遇に泣き寝入りしてしまうことが多いし、自分にもそういう記憶があるので、自分の不満を代弁してくれているような彼の本は痛快で、とても楽しめます。
今回のブラックロードはいい意味で期待を裏切ってくれました。
今回の舞台はスラム。シリーズではこれまでも危険地帯を取材しているのですが、本のメインとなるのはブラジルや南アフリカ、東南アジアなど旅行者の注目が集まる地域でした。言ってみればスラムは日の当たらない場所。そこにブチキレ旅行者嵐よういちが飛び込んだらどんなことが起こるのか。
これが非常に良い味になっている。主観的な視点でずけずけと毒を吐く彼のスタイルは好みの別れるところですが、そのスタイルによってイメージばかり先行するスラムが等身大の視点で切り取られています。「ああ、スラムってこういうことなのか」と納得。もちろんトラブルや危険もてんこ盛りで興奮しながらページをめくれる点はこれまでのシリーズと同様です。
変な同情や美化もなく、それでいてほとんど語られることない海外のスラムについて知ることができるこの本は、これまでの嵐ファンにとっても新たな発見があると思いますし、スラムに興味がある人や旅行本好きにも十分に楽しんでもらえる内容だと思います。