米国留学時代に、日本と東アジアの安全保障の授業で教科書の一つとして使用されたのが本書であった。東アジアの地域共同体構想の歴史と課題が、金融、貿易、環境、安全保障という各分野の観点から概説された論文集である。私は安全保障を勉強している人間なので、安全保障の箇所は勉強になった。とは言え、安全保障と言っても国際テロリズム対処という観点からしか書かれておらず、かなり物足りなさを感じてしまった。また、安全保障以外の箇所は関心が無いということもあり、読み流すだけで終わってしまった。ここまで様々な分野の論文が一つの本に収められてしまうと、読者がいなくなってしまうのではないかと思う。また、筆者のほとんどがアメリカ人ということもあり、アメリカ中心主義的な思考が随所にみられる。

　ただし、鳩山総理のアジア共同体構想を受け、現在、この分野は注目を浴びている。そして、本書はこの分野では現在のところ最も体系的、網羅的な英文の学術書と言えるかもしれず、この意味では読む価値があるのかもしれない。