よって、現在のIRにおける主流な理論を理解するには、ウォルツのこのネオリアリズムを理解していないといけません。最近は概説書などで、多少、説明されていますが、政治学系の人は、ぜひ原文を読んで、しっかり頭に入れておきましょう。値段は高いですが、購入して損のない一冊です。
そもそも国際関係研究において理論とはいかなるものかといった基礎研究的な考察がある程度説得的に為されており、冷戦後、様々な批判を浴びてきたにせよ、研究という面から言って、やはり重要な文献であることは確かだと思います。むしろ、批判が出ているからこそ、Waltzが理論上、何を取り入れ何を切り捨てたのか、そのことが当時としてどういう意味があり、現在としてどういう意味があるのかといったことを詳しく見てみると、理論と現実との関係などといった一般的・抽象的な問題を考える上でも改めて参考になりそうです。
アメリカでの取り扱われ方とは大きく異なり、日本では積極的な受容が見られなかったようで、翻訳も出ていませんが、こうした点で、どうした研究方法を良しとするか、原理的な問題を考えるにあたっても、積極的な意味であれ否定的な意味であれ、本書は間違いなく一つの材料となるでしょう。