良書でもあり悪書でもある
★★★★☆
有益な情報もあるが、説明とは関係ない話への脱線も多い。
有益な情報だけ抜き出せば、半分かそれ以下にまとめられるだろう。
第9章から第12章までと第15章は全く読む価値がないので、読み飛ばした方が良い。
この本は、量子力学を知らない人や、通俗説しか知らない人が、量子力学を勉強する目的で読むには適しない。
予備知識なしに読むと大きな誤解が生じかねない。
誤解を招く表現、一貫性のない記述、細かい間違いも目につく。
度々出て来るオッカムの剃刀について、著者は正しく理解していない可能性が高い。
通俗説に基づいたトンデモ本とは比べ物にならないが、素人に対しては良書とは言えない。
ただし、第5章は予備知識のない人でも読む価値が大きい。
予備知識のある人にとっては、第6章前半までは蛇足でしかない。
多世界解釈を理解したいだけなら、第6章の後半と第8章だけを読めば十分だろう。
多世界解釈がどのような内容かは示されており、平行世界ありきの通俗説的な理解とは一線を画することが分かる。
しかし、多世界解釈の証拠は全く示されてなく、唯一、デコヒーレンスと実験の一致が示されているくらいである。
あまり過度の期待をしない方が良いだろう。
平行世界の存在を小難しく解説した本
★★★☆☆
いろいろ書いてあるが、内容が難しくて「平行世界の存在を主張する」ということ意外はよくわからない。この本を読んでも、真に理解できるかは?です。
表舞台に立ち始めた奇妙な量子現象
★★★★☆
量子エンタングルメントを始め、量子力学の一般的なテキストではほとんど触れられない不思議な現象について紹介しています。量子力学の観測問題についての研究は、アインシュタインがEPR論文で量子論に対して問題を提起してから僅かながら進歩していることは知っていましたが、本書を読んで数々の興味深い実験の考案や研究がされてきたことを新たに知り驚きました。本書を読むために、必ずしも量子力学の知識は必要としません。しかし、直感に反する奇妙な量子現象の解説が多いため、理解するには根気が必要です。また、本書の半分は、それら現象に対する回答の一つである「多世界解釈」の紹介です。あくまで解釈であって理論ではないので、期待は禁物だと思います。完成されていると思われがちな量子力学において、未解明の現象について、一般人にも理解させてくれる貴重な入門書です。
この内容で真に満足する読者はいるのか
★★★☆☆
物足りない。
これが読後の正直な感想です。
『解釈問題』の名を冠したタイトルですが,副題にある通り,主に扱っているのは多世界解釈と呼ばれる物です。
本書には,「多世界解釈の現在の考え方の紹介本」「解釈問題の本質や歴史的経緯の解説本」「量子論の不思議な小話集」と,幾つもの顔がありますが,正直どれもこれも中途半端な印象です。初学者・専門家,何れを対象にした場合でも説明が不足していると感じる記述が多々ありました。自分も量子論のこの問題に関しては学生時代に少なからず触れたのですが,本書を読んでいて“もうちょっと詳しく説明してくれたらなぁ”と思った個所は少なくないです。
また,数式を使わずに量子論の説明をするのは非常に困難で,この手の解説本では様々な比喩表現に頼るのが常となっており本書も例外ではないのですが,誤解を招きかねない非常に危険なアナロジーが幾つかあったのが気に掛かりました。
ただ,多世界解釈の(ひいては量子論の)一番の問題がやはり「確率の導出」にあるという事を現役研究者の著書で再確認する事が出来て,個人的にはある意味ちょっと ホッ としました。
自分はもうこの手の勉強を本気でする事は恐らく無いと思いますが,やはりどうしようもなく“面白い問題”です。「今後もちょくちょくトピックを覗いてみようかな」と,改めてそんな気にさせてくれた点に関しては本書にとても感謝しています。
明晰な視点と解説
★★★★★
訳者和田純夫氏の『シュレディンガーの猫がいっぱい』を読んで、多世界解釈がやはり最もわかりやすく論理的(というのは結構くせ者だが)と思えた。
本書はそれをさらに詳しく説明しているが、量子論の様々な解釈を広く見渡し、非常に明晰な分析をくわえていて、類書の中でもわかりやすさという点でピカイチではないかと思う(といいながら、私にはついて行けない箇所がいくつもあったけれど)。
純然たる入門書ではないので、少なくともエンタングルメントとはどんなことか、ぐらいの知識を持っていないと話について行けないだろう。
もうひとつ、和田氏の翻訳者としての力量についても素晴らしいと言っておきたい。量子論関係の翻訳書も多いが、日本語のクセが鼻につく訳者もいて、手放しでほめられる書物は少ない。その点、この問題の専門家でもある和田氏の翻訳は日本語表現という点から見ても非常に優れていると思う。