行動経済学から遡り
★★★★★
アカロフの「アニマルスピリッツ」に、ケインズのアニマルスピリッツの重要性が説かれていたので、ケインズの本著書を読んでみました。
第4篇第12章の7にアニマルスピリッツが出ていました。それから、いろいろ読んでみると、同じようなことは、第12章の5にも出ていました。特にこの中の(3)「大勢の無知な個人の群集心理によって打ち立てられた習慣的評価」は興味深いです。それと、第12章の3とか。また、第3篇の第9章の1は、同様な意味で面白いです。特に(4)「支出が徐々に増えていくことの楽しみ。」
ケインズは、これらが、経済に影響するとは考えられないというようにいっていますが、こうして本著に記述しているところを拝見すると、意識はしていたのでしょうし、ケインズ自身も「もしかすると。。。」とか思っていたのかもしれません。
古典というのは実にいいものですね。感動しました。
翻訳は良くはないが、参考程度に
★★★☆☆
20世紀、経済学の大きな転換をもたらしたケインズの主著の翻訳である。多くの人が待望していただけに、間宮訳には大きな期待がかかっていた。その評価は両極端に割れている。だが積極面としては単に日本語的に読みやすい、安い、入手しやすいといった、翻訳そのものというよりも印象や感覚を述べているにすぎない。消極面として、翻訳の精度の面から「超誤訳」、あるいは「深く失望」という声が上がっていることは無視できない。
ちなみに、私個人は訳者とかつて親交があったので、よく知っているが、間宮氏はそこまで英語の語学能力が高いとはいえない。そのため、私個人は彼がケインズの翻訳をしていると知って、正直驚いたのだ。ケインズの英語は悪名高いほど難解とされているだけに生半可な英語レベルでは太刀打ちできるものではなく、多くの誤訳が散見されることはあらゆるところで指摘されているとおりである。
岩波が間宮氏に依頼したのは、彼が経済思想の第一人者であり、ケインズを含めた経済思想に深い教養があると思ったからであろう。しかし、すでに間宮氏は経済思想の第一線からその関心はずいぶんかけ離れて、ここ数年は都市論や公共空間論といった別のところにある。
私見としてはあくまで難解なケインズ翻訳に期待をしすぎるべきではないと思われるのだが、原文と共にあわせて読み合わせるという参考書として扱うほうが良いというのが提案である。
しろうとの戯言レビューです。
★★★★★
敢えて、わかった”つもり”でレビューします。
この本のすごいところは、市場が万能でないことを前提としていることでしょう。
需要と供給が一致して価格が決まるという、あれですね。市場が完全でない場合があるのは、当然のこととして。
ケインズは労働市場について述べているが、暗にどの市場もほとんど完全ではないのだと。
理論経済学者にとっては、かなり勇気のいる発言ですから、この辺のスリリングを感じながら読めば、楽しめるかもしれません。しかし理論に興味のない人には退屈かもしれません。
本書の目的として、「全体の産出および雇用の理論」(21章)を挙げているのがすばらしい。
すなわち、これが経済学の目的でしょう。
これを=マクロ経済学と説明している人がいるが、私は違うと思う。
何を目的とするか、それはひとつの思想である。
マクロ経済学なるものがあるとしても、その目的がはっきりしない以上、ひとつの分析手法にすぎないと思う。
英文よりわかりにくい「超誤訳」、だそうです
★☆☆☆☆
英文よりわかりにくい「超誤訳」、だそうです。
http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikeda/mamiya.HTML
別の翻訳家からも
深く失望 ― ケインズ著間宮陽介訳『雇用,利子および貨幣の一般理論(上)』
との評価も。
http://homepage3.nifty.com/hon-yaku/tsushin/bn/200803.pdf
買う前に、読む前に、ご覧になったらいかがでしょうか。
「世界の孤児」にならないために
★★★★★
はっきり言って難解です。巻末の解説や他の解説本と合わせて読むことをお勧めします。しかし現代の政治経済を考える上で、恐らくこれは必読の書です。
というのも今回の金融危機以降、世界中で新自由主義からケインズ型への経済政策の見直しがなされつつあるからです。与野党の論争でもケインズ政策が対立軸を成しており、バラマキというよりは所得の分配が争点になっているようです。「アンチ派」は今だに内需より企業の国際競争力を優先し、その為には国民所得の低下も已む無しとしています。
一方ケインズは貿易黒字の利点を認めてはいますが、それに頼った国家運営は「他国の犠牲により成り立つ重商主義時代の遺物」と見做しています。その代わりに何をすべきか?この本には様々な処方箋が、慎重な考察とともに述べられています。