背中の十字架が、そんなに重いのか
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伝説のサントラ、まさかのCD復刻です。本作製作時と同時期に大野雄二が手掛けた『人間の証明』『野性の証明』などの一連の角川作品のネームバリューに比べると、影が薄いような印象の本作品ですが、他の大野作品に引けを取らぬ名盤です。しかし、発売当時のレコード会社も映画自体も比較的マイナーだった為に、なかなか復刻の機会に恵まれず、デジタルの時代となった今でも、本作の映像作品の他に、奇跡的に現存している当時のアナログ盤でしか、その楽曲を聴く事が出来ませんでした。今後もCD化の可能性は薄いと諦めていた矢先の朗報に、驚愕と歓喜を禁じ得ません。
30年の時を経てリリースされた本盤は、当時のLPを忠実に再現したジャケットに仕上げ、更に今回の復刻に当たって新規に書き下ろしたライナーが追加されてはいますが、全体的に上映当時の雰囲気が満喫出来ます。新規に追加収録された楽曲はないので、CDのキャパからすれば収録時間は短いですが、一曲一曲の完成度は高く、大野サウンドに魅了される方なら充分満足出来る内容です。
アルバム全体の構成は、2分弱に満たない主題歌のインストがオープニングを飾り、BGMを挟んで本編主題歌で締めると云う『人間の証明』サントラ盤と同じような構成。
『人間の証明』オープニングを彷彿とさせる軽快なグルーヴィ・フュージョンの1曲目、ストリングスとフルートで情感を奏でる『犬神家』サウンドの系列ながらも、アコーディオンを積極的に取り入れているのが新鮮な2曲目、菅原文太がトラック野郎ばりにダンプカーを爆走しながら地井武男を追い詰めるシーンで効果的に使われていた4曲目は『ルパン三世』や『大追跡』、『愛は地球を救う』でも多用していた独特のブリッジ風アクセントとサックスのアドリブが全開する秀作、ドラムのリズミカルなビートにブラスとフルート、ストリングスなどあらゆる楽器の総力を結集したラテン風フュージョンの7曲目、そしてソウルフルな男の哀愁漂う主題歌とは一味違ったインストゥルメンタルは、それだけで独立したクールでジャジーなバラードに仕上がっています。その他、『カリオストロの城』のような繊細な曲や『犬神家』風サスペンス曲が脇を固め、結果として70年代の大野サウンドの集大成とも言える一枚に作られています。