75年発表のサードは、自ら「理想とするロックロールが追及できた」と語っているように、かなり手ごたえを感じる作品となった。モータウン系のサウンドを意識しつつも、野性的で痛快なまでにロックが掲げられており、そこにしたためられたリアルなメッセージは多くの共感を呼ぶものとなった。
第2のディランとしてシーンに登場した彼であったが、本作の内容から、アメリカンロックのヒーローであると見解が一致。「ボス」という称号が与えられた。(春野丸緒)
ロックの定義といってもいいようなアルバム
★★★★★
アメリカはニュージャージー出身のイタリア系移民であるブルース・スプリングスティーンの歴史的傑作。ロックという音楽の持つはちきれんばかりのエネルギー、疾走感、若者の渇望感を凝縮させ、とてつもない天賦の才が紡ぎ出した素晴らしいメロディーと詩情に溢れているこのアルバムは70年代という時代だけでなく、アメリカのロック史の中でも金字塔ともいえる完成度を誇っている。ロックの定義といってもいいようなアルバムであり、アメリカのロックのある到達点を示しているといっても過言ではないであろう。 このアルバムは、何しろ脇役が素晴らしい。サックスとそしてピアノの素晴らしいメロディーが、そのエネルギーによって暴走し、自己崩壊しそうな曲を柔らかく支える。この全般的にエネルギーを全開させているようで、絶妙にコントロールがされているところが聞く者の心を猛烈にゆさぶる。邦題は「暴走」であるが、バンドは全然暴走していない。本作は間違いなくブルース・スプリングスティーンの最高傑作であるだけでなく、ロックの可能性というか頂点を示したアルバムである。まったくの無駄曲なしで、「サンダー・ロード」で静かに始まるこのドラマは、「バック・ストリート」、「ボーン・トゥ・ラン」という生命力溢れる一連の曲に紡がれながら、ドラマチックな展開に圧倒される「ジャングルランド」で幕を閉じる。老いも若きも必聴である。
躍動するロックの輝き
★★★★★
〈バトルロワイアル〉を読んで影響されたなんて安易な理由ですが、Born to Runの鮮烈な激しさと躍動感に衝撃を受けた事を憶えています。語尾がハッキリしない歌い方といい、字余り的な歌詞といい当時にはかなり影響を与えたロッカーだったのが想像出来ます(佐野元春さん、浜田省吾さんなど)。
少ない曲数だけど密度が濃い名曲揃いです!初めて触れたブルースのアルバムがこの最高傑作盤で本当に良かった。Born to Runは勿論、Thunder Road、Back Streetsなど名曲揃いで、その中でも一番好きなのがJungle Landです。9分近くと長い曲なので時間がある時でないと中断されて悔しい思いをする困った曲なんですが、その曲の長さが逆にクォリティを加味しています。特にサックスによる2分30秒にも及ぶ間奏は、多分他のアーティストではあり得ない長さ。でもここが一番の聴き所なのも確か。これに続くピアノの繊細な響きとブルースの呟きの様な歌が最高に素敵です!! 男性が彼を“BOSS”と呼びロックの神様としてリスペクトする気持ちもわかるなぁ!
とにかく、Bonjovi〜と騒いでいる女性にもお薦めしたい一枚ですね。
青春の1枚
★★★★★
まさに青春の1枚といえる本作。胸が掻き毟られるような青春の焦燥、希望、絶望を圧倒的なまでの迫力で叩き付けた若き裏通りのチンピラの奇跡といってもいい一世一代の名演。
日本における影響力も凄まじく、多くのフォロワーを生み出したことも周知のとおりで、「ビートな」日本語ロックのイノベーターから始まって、夭折した10代の代弁者はもちろんのこと、今もご活躍の青春パンクな方々までの源流もここにあるといってまず間違いないでしょう。
ブルース御本人にとっても初期のディランの物真似から、これ以後の社会的な歌へ移ってゆく転機の直前に位置する作品で、裏通りのチンピラと詩的な叙情性が奇跡的に合致した、彼にとっても唯一無二の作品で、この作品の発表と成功が、彼自身の青春の終わりを意味したといっても過言ではありません。
ジャングルランドの暗がりに立ちすくんでサンダーロードの向こうを夢見るこのアルバムの主人公を他人のことだと思えなかった若者は世界中に多くいたはずで、その意味で、アメリカにおいて、ビートジェネレーションと繋がるのはもちろんのこと、68年以降のしらけ・沈滞したシーンに一定の活を与えたこともまた間違いないものと思われます。
しかし、ブルース自身はこの作品で全青春を決算したわけではないでしょうが、以後、アメリカの地方都市に燻る青春期を通り過ぎた無名の人々の人生に寄り添い、今やアメリカ民衆の声無き声の代弁者にまで上り詰めたことを思うと、隔世の感を感じないわけにはいかないのです。
オバマ大統領候補の政治集会で、「ランド・オブ・ホープ・アンド・ドリームズ」が大音量で流れるのを聴いたとき、ふとそんな感慨が胸をかすめたのを告白しておかなければならないでしょう。
ロックンロールの未来であり今
★★★★★
今やロック界の大御所、“ボス”の出世作といえるのがこの『明日なき暴走』である。
冒頭、ブルースが奏でる綺麗な音色のハーモニカから始まる1.『涙のサンダーロード』を筆頭に、ブルースが魂を振り絞るようにして歌いあげるボーカルに何度救われ、涙腺にきたことか…(笑)
またバックバンドのEストリートバンドもいい味を出している。特にクラレンス・クレモンズのサックスが要所要所で、若者による、ややもすると勢いばかりが先行しがちなこのアルバムを一層引き締めている。5.の表題曲でのサックスプレイはアルバム中屈指のハイライトの一つ。
どことなく都会の乾いた冬空を連想させるこのアルバムを、できれば10代のうちに聴いてもらいたい。
夜中に歌詞カードを眺めながらひっそりと聴くと、若かりし頃のブルースのやり場のない心の叫びが余計胸に痛々しい程に突き刺さります。
ロックンロールの未来であり今
★★★★★
今やロック界の大御所、“ボス”の出世作といえるのがこの『明日なき暴走』です。
冒頭、ブルースが奏でる綺麗な音色のハーモニカから始まる1.『涙のサンダーロード』を筆頭に、ブルースが魂を振り絞るようにして歌いあげるボーカルに何度救われ、涙腺にきたことか…(笑)
またバックバンドのEストリートバンドもいい味を出しています。特にクラレンス・クレモンズのサックスが要所要所で、若者による、ややもすると勢いばかりが先行しがちなこのアルバムを一層引き締めています。5.の表題曲でのサックスプレイはアルバム中屈指のハイライトの一つです。
どことなく都会の乾いた冬空を連想させるこのアルバムを、できれば10代のうちに聴いてもらいたいです。夜中に歌詞カードを眺めながらひっそりと聴くと、若かりし頃のブルースの明日なき心の叫びが余計胸に痛々しい程に突き刺さります。
まさに“Born To Run”です。