チェット・ベイカーも参加している、ジェリー・マリガン・カルテット(ピアノを欠くため)との共演である。とはいえ、彼らは背景に隠れて、恰もコニッツのワン・ホーン作品のような印象を与える。
'53、まさにリー・コニッツの全盛期に録音されたこのライヴの記録は、彼の完全燃焼をとらえたまさに空前の出来である。他のコニッツのスタジオ・アルバムでは想像もできないような、鋭い、創造性溢れたアドリヴが随所にみられる。それは冒頭の「トゥー・マーヴェラス・フォー・ワード」から最後に至るまで間然とするところがない。特に一曲を挙げるならば、ジャズメンにとって必須レパートリーとなっている「オール・ザ・シングス・ユー・アー」が特に素晴らしい。コニッツのアドリヴは「蝶が舞うよう」と評されるが、ここで舞うのは蝶ではない。ツバメやカモメのようなもっと速いなにかが鋭角的に進んでいくような印象を与える。
コニッツを呪縛し続けた師トリスターノの不在において、はじめて師を超えるアドリヴを達成できた、と言えるのではないか。
ジャズ史上屈指のアルバムであり、もちろん間違いなくコニッツのアルバムの中では「サブコンシャス・リー」を超えてダントツの出来だ。