揺れる気持ちを描くのが上手い
★★★★★
気象予報士の柚生は東京での仕事に行き詰まり、帰省中に胃潰瘍で倒れてしまう。そこで高校時代の片想いの相手・知明に再会し…というお話。
この作者さん、文章が上手いなぁ。話の構成もしっかりしているから、読んでいて「え、なぜ急にそんなコトに?」「今のセリフは誰じゃ?」という部分がありません。
私はうえださんをつい最近知ったので、まだ何冊も読んではいませんが、他の作品も読みたいと思わせてくれます。
で、柚生は想いを断ち切るため、卒業以来一方的に連絡を断ってしまっているのに、知明は普通に接してくれるわけです。二人が互いの気持ちを押さえたまま『柚生が帰省している間』という限定した時間を共に過ごすせつなさ、感情の揺れ、セリフの無い間…といったものが、とても上手く描かれています。
知明が優しいだけじゃない、しっかりした男前なところもすごく良かったです。