受け身の無法者
★★★★★
昔、ハヤカワ文庫で計3冊のシリーズで出ていたものをまとめた物です。
元々、同作者のジョイリーのジレルのシリーズの表紙の松本零士先生の絵に
ひかれて買い、このノースウエストスミスのシリーズも後日そろえた経過がありました。
そういうことで、スミスが始終ハーロックのように見えて仕方なかった(笑)
しかしスミスはもっと受動的で、これは他の批評家の方も指摘されているように
女性の性的な官能をスミスに反映させたといえるシリーズでしょうか。
それにこの本には松本さんの挿絵は一切無いので、懐かしい、とご購入される方は
そのへん注意して下さい(掲載して欲しかったです)
過去の記憶と照らし合わせて、ところどころ訳者の仁賀さん自身の手直しが
入っているように見受けられました(ジュリの言葉遣いが女らしくなっているなど)
文庫の1冊目の解説に亡くなられた野田昌宏さんの切々たるシャンヴロウへの思いが
解説として載っていましたが、あれも再録して欲しかった。
とにかく、その野田さんもおっしゃっていたように、仁賀さんの訳文は
流麗というか艶麗ささえ感じられて、このシリーズには相応しいのではないでしょうか。
恐怖と官能を味わいたい人はどうぞ。
そして同じように、ジレルのシリーズも出して欲しいものです。
ジレルはこの本の一作品で、スミスと共演しています。
(ただ、シリーズの方のジレルよりかなり勇ましい感じなのですが)