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戦後思想家としての司馬遼太郎

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 筑摩書房
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“癒しの司馬史観”の分析 ★★★★☆
好著『大正デモクラシー』の成田龍一による、司馬遼太郎を通してみた戦後思潮の検討という結構の1冊。このテーマは待望久しいものでもあり、このテーマにこの人という、格好の人を得た企画であろう。

司馬は戦後ニッポンの駆け上がる青春を応援し続けた「永遠の青春作家」(関川夏央)というのが当たっていようが、彼自身の晩年はバブル経済膨張の思潮に対して、罵詈雑言を浴びせるほどの憎悪を抱いていた。このことは、あまり知られていないように見える。少なくとも評者周辺の素朴な司馬ファンにおいてはそうだ。

作品上でもノモンハン以降は決して描かず(彼の時間も乏しかったが)、担当編集者の半藤一利がそれをものしたことは有名であろう。司馬にとって、ノモンハン以降のニッポン人は「美しく」なかったのである。

そして、今日ニッポン国とニッポン人は美しいであろうか? こういう物言いは多分に情緒的だ。私見ではこの思いを作品に即して分析したのが本書である。戦後ニッポン人の思想を培った最大の作家、それが司馬遼太郎であるからには、その思想を検証する意味は大きい。分析は精緻にして網羅的、作品に即した誠実なものだ。これは労作である。

本書と併せて、昭和恐慌など日本経済史の泰斗・中村政則の『近現代史をどう見るか-司馬史観を問う 』(岩波ブックレット No.427)が必読だ。
そこでは司馬の歴史観そのものに内属するイデオロギーを抉り出し、戦後思潮への影響を見極めている。それを評者は「癒しの司馬史観」と呼ぼう。
このブックレットは、現在手に入りにくいかもしれないが。