司馬史観と戦後歴史学
★★★★☆
国民国家を肯定する「司馬史観」は安易にナショナリズムに利用されやすい(されてきた)。本書は司馬遼太郎の二つの小説が扱う明治日本と、それが書かれた1960〜70年代を見据えて細かく問題点を挙げている。全体的に平易で偏りもなく無難だが、それだけにまとまりに欠けていて、作者・成田龍一氏の歴史観が見えないのが残念。しかし、なにかを論じようというよりも問題提起の書として楽しめるのは間違いなし。ただ、二つの小説を読まないと(またはある程度の歴史の知識がないと)楽しめないので、まずはがんばってながーい二冊の小説を読まなければなりません。