バッハは10才の時に両親を亡くしている。そして最初の妻、マリーア・バルバラにも先立たれる。そして1721年12月、15才年下のケーテンの宮廷歌手だったアンナ・マグダレーナと結婚する。おそらくは明るい家庭生活を取り戻してくれた若妻に感謝の気持ちでいっぱいだったに違いない。それが、バッハのイマジネーションに火をつける。イギリス組曲・フランス組曲・パルティータはいずれも新婚早々に妻のために書いた2冊の『アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集』に由来するからだ。
フランス組曲・イギリス組曲ときて、なぜイタリヤ組曲といかないのか、が不思議ではある(●^o^●)。『パルティータ』とは舞曲の組曲のことだ。ちなみに『イタリヤ組曲』というのはイゴール・ストラビンスキーの作品にある。
グールドはこのバッハの妻への愛に満ちた作品をいつものようにとつとつと弾いて見せる(●^o^●)。グールドはいつも一度に8時間録音していたそうだが1時間以上ピアノに向かっていることはなかったそうである。あとはただ再生テープを聴き、最良の自己表現たるテイクまで試行を続けるのだ。それがとつとつと弾いているように聴こえるというのも面白い。
グールドに対して、「ニュータウン的デオドランティスト」と言った批判がある。
言っていること自体はわかるが、その人がロマンティストだろうがデオドランティストだろうが、
私としては美しい作品を提供してもらえれば良い。
グールドの名演には人間の本源に達する魂が宿っている。
彼はルビンシュタインを愛する人でもあったのだ。
ちなみにグールドの著作集も面白いので、そちらもお勧め。