5人の登場人物がやり取りする手紙のみで表現された異色の小説。『レター教室』という題名の示すとおり、それぞれの手紙は「借金の申し込み」「身の上相談の手紙」「病人へのお見舞い状」などタイトルがつけられ文例としても使えるようになっている。
5人の書き手による違いはもとより、社交的な手紙から歯に衣着せぬ悪口の手紙まで各人が書き分けるスタイルは実にさまざまである。中には「英文の手紙を書くコツ」などのように手紙の中で手紙の書き方を指南するという凝った仕掛けを施されたものもある。ストーリーは登場人物たちの繰り広げるドタバタ喜劇風の人間模様で、はじめはあっさりしていた人間関係が、恋愛、嫉妬、裏切りなどさまざまな感情によって複雑に絡み合っていく。作者は交錯する感情の中に人間心理の機微を描き出し、手紙という表現手段を用いることで人が常に他者との相対関係にあることを浮き彫りにしている。(林ゆき)
こういう三島由紀夫もありです!!
★★★★★
いろいろな手紙の文例集であり、かつ、それがそのまま個性豊かな(いかにも三島らしい)5人の登場人物の物語となっている、おもしろい作品です。
たとえばこんな。
「年賀状の中へ不吉な手紙」
「処女でないことを打ち明ける手紙」
「すべてをあきらめた女の手紙」
「閑な人の閑な手紙」
・・・
三島先生、遊びまくってます。
さいごに「作者から読者への手紙」がついていて、これが皮肉たっぷりでまた、よい。
これ読んで、手紙書きましょう。
レター教室
★★★★☆
これは世にある手紙の作法について書かれた実用書の類いではなく、5人の登場人物の手紙のやりとりによってストーリーが展開していく書簡形式の小説である。
この5人はそれぞれ人格の違いがはっきりしているので、手紙の書き方や文章にも差がはっきり出ており面白い。
ただ、彼らのような文章を今の若い人が使うと不自然になりがちだと思うので、実際の手紙の文例集としては使いにくいかもしれない。
だが、「招待を断る手紙」「英文の手紙を書くコツ」など参考になる章もある。
内容について。
全体的には、一貫してユーモラスなお話。
特に最後らへんの章では声を上げて笑ってしまった。
三島由紀夫は読者に対して友好的な作家だったんだなあと実感。
笑えます。楽しめます。
★★★★★
レター教室として参考にしてよいものか!?と、聞かれれば・・・
怪しいものなので、答えはNOです。
笑えます。うなずきます。怒ります。『はぁ〜!?』ってため息つきます。そんな本!!
登場人物の5人!!
名前のイメージからくるそのままの人物像5人の手紙のやりとりだけで進んでいきます。
それぞれの手紙を読み進めていくと、5人の心情や感情、
手紙を書いている様子が頭に浮かび思わず笑う事多しです。
読者の年齢層によって、感じ方が変わってくる本だと思います。
若い方が読むとどう感じるのか!?面白いだけかも知れませんね。
経験豊富な大人が読むと、倫理観が漂いながら、
『何だって!?』と、怒りながら素直な文面に笑えてきます。
納得できる願いもあり、無理な願いもあり、自己中な願いもあり、、、
ぐちゃぐちゃなシチュエーションなのですが、三島由紀夫の文才に、引き込まれます。
一気に読める楽しい本です。
あの三島由紀夫が!!
★★★★★
某雑誌の中で大人が読む1冊として紹介されていた本である。
大人としてのたしなみの一つとして手紙を書く手本として買ってみたが、全く別物。
今までの彼の小説の中でもなかなか面白い部類に入る。
学生ぐらいだとこの文章の面白さは分からないかもしれないが、多少人生の襞を重ねていくと、この本の面白さがわかってくる。
皮肉は美でなければならない
★★★★★
面白い!!!面白いよ!!!
5人の個性的な登場人物の手紙のやりとりでのみストーリーが展開されていく。
携帯電話やパソコンのない時代に書かれた作品なので、時間間隔や手紙ならではの情緒や秘められた思いなどが面白く分析され描かれている。
確かに天才だ!
作中の登場人物の人間臭さは作者の研ぎ澄まされた感覚のなせる業だろう。
こんな妬みや嫉妬があるのかと思い知らされた。
世は常に嫉妬にあふれている。それを手紙という形で書いているため、争いの情景はない。
そこがこの作品をライト感覚にしている由縁だろう。
2度読んでみたが、とらえる人物像に変化があった。
おそらく読んだ年齢と自らの置かれている環境によってその人物への共感(投影)も変化するだろう。
例えば20歳の時と40歳の時に読むのではまるで違う印象を持つだろう。
また時をおいて読んでみたい。
それ以上に本を置くことさえ忘れさせたのは、軽快かつ痛快なユーモアいっぱいの文章だろう。
皮肉とは美でなければならない。
クスリと笑える言葉遊びがおもしろすぎた。