講師業の方にも読んで欲しい
★★★★☆
著書の中に、講演をお受けするときは一時保育を付けることを条件として主催者にお願いしてきたという箇所があります。最近でこそ、図書館を併設している女性センターを中心に一時保育に取組む会場が増えていますが、それまでは母親が子連れで講演会や講座に参加できるだけでマシが当たり前の時代があったんですね。
そう考えると、セミナー主催者は赤ちゃんや幼児のいる夫婦が参加する可能性のあるセミナーなら一時保育の可能性を考えて会場選びをしなければなりませんが、実はその当たり前のことができていないケースって結構あるんです(金融機関主催のセミナーなんか特にそうですね)。
そういう意味では支援者だけでなく、講師を引き受ける人やその主催者にもこの本を手にとって欲しいと思います。
子育て支援の忘れてはならない基本について
★★★★★
「母性の研究」以来、母性愛神話や育児ストレスからの解放に尽力し続けた筆者は、遂に「あい・ぽーと」という育児支援の現場を得た。
少子化問題の議論は盛んだが、自分の観念や、無味乾燥な統計や理論から少子化対策を語る者がもっぱらで、実際の育児の現場からの声が議論の場に届くことは稀だ。最近では育児支援の現場からすら、子育て支援や保育等の少子化対策を疑問視する声も出てきている。
これは、観念や主義ではなく、実際に即した形での子育て支援の実践記録である。筆者は長年、育児に苦しむ母親たちに接して研究を続けてきた。その経験を生かし、「あい・ぽーと」では、実際に育児をしている親たちの側に等身大で寄り添い、親の成長を支援してきた。著者自ら何度か、自分の観念を親に押し付けかけるが、親や「あい・ぽーと」のスタッフと丁寧に向かい合うことで克服していく。
大所高所から親を見下すことがなく、育児や親の成長を支援してくれる方を増やすためにも、少子化に関する議論を観念の押し付けに終始させて実効力を失わせないためにも、育児支援に関わる方へ本書をお勧めしたい。