愛する夫スコットを亡くして悲嘆に暮れるジェニー(カレン・アレン)は、ある日突然スコットに生き写しの男(ジェフ・ブリッジス)と出会う。彼こそは、人類の呼びかけに応じて地球に降り立ってきた異星人「スターマン」であった。しかしアメリカ政府は、彼の来訪を地球侵略の第一歩と受け取り、彼を捉えるために軍隊を出動させる…。
あたかもスピルバーグ映画のような題材にジョン・カーペンター監督が果敢に挑戦したSFヒューマン・ラブストーリー。それまで悪の香り漂う斬新なホラーやアクションをものとしてきた彼が、ここでは今までの悪業に懺悔(ざんげ)するかのように(?)麗しき善意の演出を披露した秀作。彼を監督に抜擢した製作総指揮マイケル・ダグラスのセンスもなかなかのものだ。ロード・ムービー仕立てであることも、カーペンター映画全般に精通する不思議な爽快感を見事に醸し出している。(的田也寸志)
かっこいいぜマーク
★★★★★
映画ってのは、安く作って全然いいのですな。
言いたいことがある限り、どんな作りでも構わない。
この作品、いかにもアメリカ人が好きそうな
宇宙人ものの衣を着せた南部福音書伝道映画です。
土臭い映画です。
最後の方で、主人公二人を逃がしてやったマーク・シャーマン
に国家安全保安局の上司が怒鳴りつけます。
Shermin, you are finished.
I will have you eviscerated for this.
(シャーマン、お前は終わったな。私がお前の腸をひきずりだしてやる。)
するとマークは、悠然と葉巻をくわえながら言い返します。
Well, as much as I hate to stoop to symbolism.
(そうかね。俺はシンボリズムには絶対屈しないぜ)
いやはや大したロック野郎だぜ、カーペンターのおっさんは。
そうだ!あらゆるシンボリズムに唾を吐け!
日中に観るならゼヒ仕事をズル休みして観てほしい。
★★★★☆
ジェフ・ブリッジスが主演で宇宙人の役というところから、なんだか私のツボを突きまくる。
ジェフ・ブリッジスはなんか過小評価されているんだけど、やっぱこういう映画に出てるからだろうなぁ。・・・なんて思いながらそういうところも含めて私は気に入ってしまった。(リチャード・ギアのパチモンなんていった人がいたが、ジェフ・ブリッジスのが先輩だゾ)
まあストーリーは馬鹿らしいし、突っ込みどころもありますが、あえてここでは深く触れません。
変なハッタリもあまり無い(グロな宇宙人も出てこないし、ショッキングなシーンもあまりない。)ので、観終わった印象は地味かもしれないけれど、夜中に眠れないから期待しないで観はじめるとか、たまたま仕事を休んだときにテレ東とかでやってたりすると、結構印象深いと思うな。
死んだ夫にそっくりな宇宙人に対して最初は恐怖を抱きなんとか逃げようとするけれどタイミングがなかなか合わず、付き合っていくにつれ徐々に心を開いて親しみを感じてくる描き方は、さすが。
ついつい引き込まれて数箇所ホロッとさせられてしまう。
確かにトンデモなところはあるけどサ。そう目くじら立てるとせっかくの良い映画も楽しめなくてもったいないよ。
それにこの映画そんなに安っぽくて目立つところはあまり無いので、SFに拒否反応を起こさない人なら普通にラブストーリーというかヒューマンドラマとして楽しめると思うんだけどな。
こういうのを隠れた”Gem”というのでしょうか。
★★★★★
B級ホラーの雄、ジョン・カーペンター監督の異色「ラブ・ストーリー」。
人類からの「お誘い」に応えて地球を訪れたエイリアンがアメリカ軍に撃ち落され、追跡される皮肉な展開。
その目的はもちろん生体解剖です(笑)。
追い詰められたエイリアン=スターマンは偶然出会った美しい未亡人、ジェニーの亡夫のDNAをコピーして人間化。
宇宙から救出にやって来る仲間とのランデブーポイントを目指して二人の旅が始まります...。
別人とは知りつつも最愛の男性と瓜二つのスターマンに否応なく惹かれていくジェニーの切なさ。
まっさらな心で人間世界を眺め、その矛盾に戸惑うスターマン。
そして二人を追う科学者(チャールズ・M・スミス)の気弱さと善良さにも説得力があります。
スピルバーグの作品のようなスペクタクルやドラマチックな展開をねじ込むことはカーペンター流ではなく、それは本作でも同様です。
主演のジェフ・ブリッジスとカレン・アレンの二人の演技とコンビネーションにきっちりと大枠のところは委ねられており、結果的にはそれが成果を上げております。
ちゃんと孤独な二つの魂が一歩づつ近づいて行く様が説得力をもって描かれていて、
破天荒な物語ながら感動的なラブストーリーとなっています(ちゃんとメイク・ラブシーンもありますが全然不自然さがありません)。
クライマックス、砂漠に降る雪の中で描かれる別離は飾り気もありませんがストレートに心に響くものとなっています。
ジェフ・ブリッジスの巧さは今更ながらですがカレン・アレンの魅力に関してはスピルバーグの「レイダース失われた聖櫃」よりも
本作の方が遥かに上で、役者の魅力でドラマが成立しているという意味で実に「映画らしい」佳作となっております。
女性の方々にもっと見ていただきたい作品ですね。