金属の広範な知識を概説する書
★★★★☆
この本は、専門性を高めるための書としてではなく、金属を学ぶための地図が
どこに広がっているか、という地図作りのための書と考えると、このようなガイドが
必要な方にはとても有用と言えると思います。
金属を工学(現場)と科学(学問)として分けてアプローチを試みており、主に前半部に
科学としての概説がされ、後半部に工学的な説明が系統だててなされています。
著者の専門のバックグラウンド(製鉄)からも鉄や鋼を中心として解説がされている
感じを受け、特にその分野に基礎知識を持つ人は十分に入れると思いますが、基礎的な
部分を他の書で補わなければその分野だけでも広範な領域をカバーするだけの地図が
描けないと思います。
非鉄分野に関しては、主要な金属材料に関して最低必要な基礎知識が載せてあり、
入門の初歩としてまずは読んでおくとよいと思います。
終章の表面技術もやはり入門書とするには心許ないと思いますので、基礎的な書を
もう一冊手元に置くか、他の書で専門性を補う必要があると思います。