赤毛のりすの一家を中心に、静かにめぐる森の一年
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キックとルケットの赤毛のりすの夫婦に、四匹の子りすが生まれました。子どもたちは何が食べられるか、どうしたら「しっぽをふくらませ」て木々のあいだを渡れるようになるか、テンがどんなに怖い敵かを学びながら、すくすく成長していきます。ところがある日、「二ほんの足であるいている」とってもおかしな「大きな動物」、つまり人間が森に現われます。初めて人間を見た、いたずらぼうずの子りすパナシは、すきをつかれて足を撃たれ、捕まってしまいました…… 。
りすの一家の一年が、コルデット賞受賞作家ロジャンコフスキーさんの詩情あふれる絵と、石井桃子さんの丁寧で平明な言葉とで語られていきます。りすの言葉(警戒音や鳴き声の種類)や、季節によって変わる食べ物(もみの実、キイチゴ、ハシバミの実)、りすのさまざまな行動など、まるで「りす博士」になったようにいろいろわかってきます。
ところで、おりで飼われていたパナシは、かわいがってくれる「人間の子ども」を「すきになりはじめていました」が、森のことが忘れられず逃げ出し、やっと家族と再会します。人間とは交わらない、動物たちだけの静かな森の暮らしが、いつまでもそこなわれないように祈りたい気持ちになりました。