その記述は、数理的な手法を援用した、論理的に極めて明快なもので、一部の思想書のように概念を弄ぶようなところは一切ありません。
(むしろ、これを読むと、今までの権力論がいかに論理的に不徹底だったかがよくわかる。)
もちろん、単に他人の理論にケチをつけてるだけではなく、著者独自の権力論の試案もキチンと提示されています。
他にも、「物理的な力は、人に何かをさせることはできないが、させないことはできる」とか「組織の権力と組織における権力!は違う」とか、当たり前のようで見過ごされやすい指摘がたくさんなされていて、非常に勉強になりました。
そういうわけで、権力論についてある程度知っている人にとって得るものは多いし、権力論を始めて学ぼうとする人も、まず、この本から読んでおけば、はっきりした見取り図が得られ、余計な回り道をしなくてすむでしょう。そういう意味で、多くの人に勧められる良書です。
また「権力」概念乱立の,もう一つの背景として,3権力を,それ自体について説明を要しない「説明項」と考えるべきか,あるいは,それ自体について説明を要する「被説明項」と考えるべきか,の対立があることを筆者は示す.
その上で結論として,権力を探究課題(被説明項)と捉えるべきであると筆者は言う.重要なのは,行為者のありようを決める社会的な「しくみ」を明らかにすることであって,明らかになった「しくみ」を唯一の定義と主張する傾