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権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)

価格: ¥840
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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調和ある社会へ ★★★★★

A君との対話形式で書かれた本です。読みやすく、面白いです。

権威と権力が及ぶ、日常的なものから、そうでないものにまで考察してあります。

権威と権力によるまとまりがある社会ではなく、各人が自由な調和ある社会がユートピアであり、実現はできないが、目指すべき理想である、と筆者は言います。

戦前では最たる権威は天皇でした。現在その役割を担っているのはメディアでしょう。 私たち一人一人が情報を見極め、メディアのプロパガンダに流されぬような自我を確立することが重要であることを学びました。 しかし、全国民がそうなることは有り得ないということも、皮肉をこめて言えることです。

この本を読んで、権力・権威の意識が変われば万々歳じゃないでしょうか。
権威と権力を親子関係から考えてみませんか? ★★★★★
「権威」と「権力」と聞けば、はじめに政治学の専門分野と捉えてしまうかもしれないが、本書は、権威と権力を親子関係といった普段の生活意識に基づくものから、職業やメディアそして政治までを巻き込み、幅広く身近に見つめなおそうと試みている好著だ。
高校生と医者の二人の対話という設定で議論が進んでいき、医者がやさしく諭しながら話しをリードしていくので、初め「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎著)的雰囲気が頭に浮かんだが、後半に進むにつれて高校生の質問や考え方もかなりしっかりしてきて、こと後半の政治に関することでは、その内容による時代背景の違いにやや戸惑うかもしれないが(1974年初版)、ほぼ対等に議論を交えることに驚きを覚える。

とはいってもやはり、本書の魅力は、権力と権威をずっと身近に感じて考えることだ。
「〜の権威が失われた」と簡単に耳にするが、それを回復することとは?
「海外は〜だから、日本も〜するべきだ」といった言葉に潜む権威やそれに対してどう考えればいいのか?
人が権威を信仰してしまう心理的背景とは?

個人的に印象に残ったところは、「組織は感情もなく意思もない」と語られた部分。つまり組織や集団を擬人化するのではなく、「組織の意思は個人の意思」と客観的に考える視野である。情報過多の時代だからこそ、権威や権力によって自分を見失うことなく生きていくために、本書を是非多くの人に勧めたい。
歴史認識への問いかけ。。。 ★★★★★
 なだいなださんの書籍は、本当に本質を穿った内容が書かれていて、
なださんの洞察力には学ぶべきものが多いです。
 本書籍もそういった書籍の一つ。
出版された年月をみると日本ではなにやらゴタゴタが色々起こってい
た時期と重なっています。(知らない人は、高校生向けの歴史資料集
の年表でザクッと歴史の経緯を眺めてみてください。)
「〜主義」という言葉は物心ついた時から何かと耳に入ってきていま
すが、「民主主義」「社会主義」などその他諸々の「〜主義」につい
て、その本質はどこにあるかを対話形式で語りかけてくれます。そし
て、それらは根っこのところで同質のものだという認識に至ります。
(どういう風に同質なのかは本書を読んでくださいね。)
ついには、日本の天皇制にも言及しています。右翼、特に極右の人が
読んだらどういう反応を示すでしょうか。なださんのさり気ない戦い
ぶりには感心させられてしまいます。
 読む人によっては、本書の内容が受け入れられない人もいるかもし
れません(受け入れたくない??)が、よく読めばとても大切な、そ
して、とても積極的な境地に至ることができると思います。
 ついでですが、本書を読み終えてマルクスさんの書物も一度読んで
みたい気持ちになってしまいました。「マルクスさんの精神」を理解
するために。とにもかくにも、権威と権力の関係にきちんと目を向け
るきっかけを与えてくれ、痛快な読後感を味わうことができました。。。オワリ
権威について考えさせられる本 ★★★★☆
この本は、今から30年近く前に書かれたものです。著者のなだいなださんは、慶応大学卒の有名な作家・精神科医です。この本では、最近もはやっている、対話形式で、権威と権力の違いや、それがどこからきて、それに対してどういう立場をとればいいのか、といったことが論じられています。一般に、権力は、人にいうことをきかせるときに使われますが、権威は、いうことをきく側の方が感じる心理だという点が異なっています。では、人はどういうときに、権威を感じるのでしょうか?これは、対等ではない関係において、依存者の心理を持っているものが権威を感じやすい、といわれます。面白いのは、権威的な人間関係が強調されるときには、必ずといってよいほど、親子関係が持ち出されることが多いそうです。例㡊ˆば、天皇と国民の関係、神と人間との関係、などです。当初は親に権威を感じ、子供はいうことをききますが、やがて一人前になって対等になると、権威を感じなくなります。そうなると、子供は親のいうことをきかなくなります。権威の通用しない対等な人間にいうことをきかせるには、権力に頼る人間関係が生じる、と説明されています。さらに、なぜ子供は権威に従うのか、ということを考えると、そこには自分が知らないことに対する不安がある、ことが分かります。つまり、自分の内部にある漠然とした対象のない不安が、権威に頼る心理を作る、ということです。逆に、権力に服するのは、外側からの力に対する具体的な恐怖感がある点が異なります。