トム・ウルフの世界的ベストセラー小説をもとに『存在の耐えられない軽さ』『クイルズ』などのフィリップ・カウフマン監督が壮大なスケールで描いた宇宙開発秘話。1950年代より始まった米ソの冷戦構造のさなか、アメリカは宇宙開発に一歩先でていたソ連に対抗すべく、マーキュリー計画を推進。7人のパイロット(スコット・グレン、エド・ハリス、デニス・クエイドなど)が宇宙飛行士として選ばれるが、それに背を向けるかのように、初めて音速の壁を破った男チャック・イエーガー(サム・シェパード)は独り自らの記録を超えるべくチャレンジを繰り返していく。
国家に殉じて英雄となるべく訓練を続ける男たちと、あくまでも一匹狼として生きようとする男、ヒーローの姿を対比的に描いた快作。アカデミー賞編集・作曲・音響・音響効果の4部門を受賞。(的田也寸志)
「誇り」と「時代遅れになる」ということ
★★★★★
パイロットとしての誇りを胸に、最先端の宇宙計画に参加した男たちと、それに背を向けた男たち。マーキュリー計画の光と影、時代に背を向けるかのように「飛行機乗り」としての生き方に固執するイエーガー。ふたつの物語が絡まりあって初めて描き出さすことができる、選ばれた資質をもつ者の傲慢で美しい「誇り」が、時代に呑み込まれてゆく運命の予兆・予感が美しくも切ない。
実在人物から「小物」まで、マニアックに造りこまれた50〜60年代の時代背景も見もので、特にジョンソンの尊大で不愉快な性格描写は、この映画の非常に重要なモーメント。彼が牛耳る、装われた無邪気さの裏に邪悪さと下卑た大衆操作が垣間見えるパーティーで、「パイロット」たちが互いに視線を交わすシーンにイエーガーの孤独な挑戦が被るラスト近くはすばらしい。これをカットした映画配給会社の判断は情けない。自分の仕事でプロを目指し、プロを自覚している人なら、必ず共感できるはずだが、そうでない生き方の人には理解できない部分が多いかもしれない。そういう意味で格好いい娯楽作でありつつ、重い内容を問いかけてくる映画でもある。
久しぶりに見返して、またよかった!
★★★★★
とにかく、かっこいい。
かっこよすぎる。とくにサム・シェパード。
見ようによっては、
典型的なマッチョ映画だけど、
それをひっくるめても、
やっぱりかっこいい。
「宇宙へ」ということよりも、
どちらかというと、
男たちそれぞれの「俺の生きかた」が、
とても素敵です。
長さについては、
長い、という人もありますが、
この坦々としたところがよいのであって、
切って縮めたら「男たち」が、
安っぽくなってしまうような気がします。
たしか、景山民夫さんが好きだった映画。
長すぎるとの意見も多いようですが・・・
★★★★★
この映画は、日本公開時は大幅にカットされて2時間40分ほどに編集されていました。特にラストシーンが大きく異なり、宇宙飛行士が栄光に包まれるシーンが全くなく、イェーガーの高々度記録挑戦飛行のみで構成されていました。しかも、字幕の誤訳(?)も手伝って、イェーガーが記録を破ったかのような印象で、ヒーロー健在を思わせました。後にビデオで発売された全長版を鑑賞したとき、新旧ヒーローの交代を感じさせるラストシーンにびっくりしたのを思い出します。ビデオ発売後も日本公開版が観たくて名画座に行きました。日本公開版は親日家のカウフマン監督自身が編集した、なんて話も聞きましたが本当のところはどうだったのでしょう。
エピソードが多い全長版も好きですが、日本公開版が残っているなら、併せて発売してもらうとうれしいですね。
若き日のサム・シェパード
★★★☆☆
当時のサムは世間の評価を欲しいままにしていた。学歴、文才、ルックス等、
この映画にひとつ評価されるものがあるとすれば、やはりテーマミュージックであろう。
誰がなんと言おうと普遍の名曲だと思う。レボン・ヘルムや今をときめくベテラン俳優などもキラ星のごとく出演している。
当時リアルタイムで見れなかった人には探すだけでも楽しめると思う。
確かに興行的には失敗作になるのだろうが、比較的誠実なえいがであろう。
「正しい資質」まさに矛盾をかかえたタイトルであろう。
エンターメントー的には面白くない映画だが何度も何度も見るうちに味の出てくる映画である。
長いストーリーに減点
★★★★☆
全部を見るには根性が必要だ。長すぎる。
映画にするにはもっと削らなければ。監督の力量に疑問符。
どうしても原作より短くダイジェスト的にならざるを得ない。映画の宿命。それを忘れて作ってしまった作品。宇宙飛行士に選ばれたものと、それから外れた男がひたすら音速を超えることに情熱を傾ける。
SFファンなら見てもいいかも。