インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

大義を忘れるな 革命・テロ・反資本主義

価格: ¥5,040
カテゴリ: 単行本
ブランド: 青土社
Amazon.co.jpで確認
半分反発しつつも、スリリングな読書を楽しめる。 ★★★★☆
「政治においても、われわれはもはやすべてを説明できるシステムやグローバルな解放政策をめざすべきではない、壮大な解決策を強要する際にも、それに対する具体的な抵抗や介入ができる余地を残しておくべきである。」

冒頭の言葉に「こうした傾向にすこしでも共感をおぼえる読者は、おとなしく本書をわきに置き、読むのをやめたほうがよい。」と続きます。つまり、この本でジジェクは、抵抗や介入の余地を許さない形での壮大な解決策を強要することを主張します。ブレアの<第三の道>を常識の限界とし、それを越えるため「失われた<大義>に対する信仰が必要である」と主張します。大きな物語が消失した現代において、大義への信仰を復活させようとするジジェクの主張が危険を孕むことは容易に想像されます。MephistoWalkerは必ずしもジジェクの主張に100%共感する訳ではありませんが、彼の挑発的な物言いに半分同意し、半分反発しながらスリリングな読書を楽しんでいます。

「言論の自由が機能するのは、どのような非難が無作法かをわれわれに教えてくれる、礼儀という一つの不文律に全員が従ったときである。礼儀は、ある特定の民族的あるいは宗教的「生活様式」の、どの特徴が許容され、その特徴が許容されないかを教えてくれる。」

この意味での礼儀が今の日本で失われているのではないでしょうか。そんな社会では言論の自由は機能しないという現実をジジェクは指摘しています。これはジジェクの主張に共感を覚える点ですが、一方で、環境問題の取り扱いについては、反発を禁じえません。

カタストロフィが起こるという恐怖感を煽ることにより壮大な解決策を強要すること、これはテロであり、全体主義的思想ですが、ジジェクはこれを是としています。カタストロフィが起こるか否かについて、科学的な根拠が与えられない場合、カタストロフィが起こる前提で政策を決定することは、地球温暖化の例を取り上げるまでもなく、愚の骨頂です。本書が、「エコロジーに関する課題は、平等主義的恐怖政治という「永遠の<イデア>」を作り直す特異な機会となるのではないか。」という言葉で結ばれていることは、ジジェクの科学に対する根拠のない嫌悪感を痛ましいまでに露呈しています。

全体主義を徹底的に排除した後に繰り返し現れた環境ホルモン、ダイオキシン、地球温暖化といった環境問題は、いずれもカタストロフィの恐怖を煽るとともに、倫理的な問題にすりかえることで反対論を封じ込めようとする点において全体主義との境界があいまいになっています。このことは、全体主義に対する嗜好が人間の遺伝子に書き込まれていることを想像させます。それは、人類の発展を支えてきた想像力なのだろうと思います。