うざい注釈群
★☆☆☆☆
注釈がうざいです。特に上巻は。
注釈すべきところ、そうじゃないところは読者によりけりですが、私には、「ここは想像させろよ!」「わかってるわい!」というところまで注釈があってうざかったです。
注釈とかあとがきとか、スルーできないたちなので。
注釈がうざすぎて、(だっていちいちページめくったら、つっこまずにいられないことかいてあるんですよ。気が散る!)二度読み、三度読みはあたりまえです。
作品は人の思考というよりthoughtの中覗きこんでるみたいです。
光より速いもの。それは人の思考の速さ。と勝手に私は思い込んでますが、本当にそうなんかもなあと、疲れます。簡単に言えば。
だって日常生活の人の頭の中をほんの一分でも覗いた事ありませんから。
作品としての評価は未知との遭遇だーということで★6
商品としては注釈のせいで★-5
素晴らしい翻訳
★★★★★
ほかの訳者の方の本を持っていたのですが、日本語としてわかりづらい文章となっている箇所が多く、通読を諦めました。しかしこの作品は読みたかったので他の翻訳者を探したところ本書に出くわしました。
翻訳が素晴らしいです。
原書はどうなのか知りませんが、この翻訳で読む限り、入り組んだこの物語も、語り手の登場人物に同化して物語に入り込め、複雑さのわりには自然に頭に入り理解されました。(集中する必要はありますが)
注釈や付録も充実しており、作品の理解や通読のためにたいへん役立っています。
木
★★★★★
「二十世紀アメリカ最高の作家と評されるフォークナー、その彼の最初の傑作である本作品については、わが国でも早くから紹介され、翻訳され、さまざまな議論がおこなわれてきたので、ここであらためて詳しく解説する必要はないだろう」
と解説にあるのですが、ぜんぜん知りませんでした。
1929年出版で、しかもアメリカ南部の小説なので、文章から意味が読み取れなかったりするのは当たり前です。
それに一章、二章は、文体もかなり実験的。
ただ、アメリカ文学だからなのか、長い文章が何ページも続いてうんざりする、なんてことはないです。
変わった文体の小説を読みたいのであれば、少なくともこの本の一章は読むべきだと思います。
フォークナーはなぜか日本では知名度も人気も低いらしいですが、まぁしょうがない気もします。
よく理解できない記述があっても、何時間も読み進めて、600ページを読み切った先には、解説にあるように「一冊の小説が読者の人生を変える」瞬間が待ち受けているかもしれません。
奇跡的傑作
★★★★★
フォークナーの語りの素晴らしさが遺憾なく発揮された傑作。
第一章は非常に簡単な言葉で綴られているが、そこに並んだ一文一文を理解するには次の章を読む他ない。フォークナーはもともと第一章(ベンジーの主観)で作品を終らせる予定が、いざ書き終えてみると自分はまだ書きたいことを書き切っていないと自覚。続いて第二章を書き、二章を書くとまた同様の理由で三章、四章、そして補足を書いた。章によって語り手が変わり、文体にも著しい差異がある。しかし特に個性的なのは去勢された障害者であるベンジーの第一章と自殺するクエンティンの第二章だろう。
発表当初、批評家に絶賛とともに迎えられたにも関わらず一般読者には全くうけなかった本作は、しばしば難解との阻止りをうけるが、いざ読んでみればその文章は純感覚的に綴られており、論理的難解さとは無縁な無垢な時間感覚が作品全体に漂っていることに気付くだろう。ゴダールやタルコフスキーの映画の評価が高い日本にはフォークナーも受け入れられるのではないだろうか。