固体物理の勉強に最適
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このグロッソ・パラビチニの固体物理は洋書版が2000年に出版された比較的新しい本であり、現代的な内容も含んだ教科書である。理論的な側面にも注意が払われているためやや難しいかも知れないが、計算も丁寧に書いてあるため、しっかり読めば理解は相当深まるだろうし、かなり力がつくと思う。
下巻では、主に半導体、磁性、超伝導について解説してある。半導体の章(13章〜14章)では多くの固体物理の教科書には書いてある半導体の物理的な事柄がほとんどであるがここでも理論的な面には注意が払われいるため、理論にうるさい工学系の学生が読むのも面白いと思う。個人的に特にすばらしいと思うのは磁性を扱う章(15章〜17章)でここでは量子ホール効果、近藤効果などの古い固体物理の教科書では見られない概念が、それも天下り的に式を与えてではなく、それらの現象の起源から理論的にしっかりと導かれているのである。また、17章ではイジング・モデル、ハイゼンベルグ・モデル、ハバード・モデルの意味を解説し、実空間のみではあるが繰りこみ群の考え方にも触れている。超伝導の章(18章)は、急速に発展するこの分野の論文を読むためには不十分であるが、それでも銅酸化物高温超伝導を紹介し、BCS理論や種々の超伝導の現象について最低限の解説がなされている。
このような内容は専門家によるかなり難解なそれぞれの分野の専門書は別として、他の固体物理の教科書にはない点であろう。本書は他の固体物理の教科書と比べるとやや難しいかも知れないが、物性に関わる研究者、大学院生(進んだ学部生)に是非一読勧めたいものである。