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映画への不実なる誘い―国籍・演出・歴史

価格: ¥2,310
カテゴリ: 単行本
ブランド: NTT出版
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円熟の語り口 ★★★★☆
 講演をもとにしていることも理由だろうが、かつての蓮實節のような鬼面人を驚かす文体、着目点、論理展開は目立たなくなっている。普通の文章として、スイスイ読める。自分が映画について語るための環境は作ったという自信からだろう、もはや敵への激しい攻撃もなく、方法論的な自己言及もなく、ただ、語りたいことを、語りたいように語っている。蓮實ファンとしては、「国籍」の章など、いまさら感もあるが、渇えは癒えた。
 私としては、やはり「歴史」の章が面白い。蓮實さんがゴダールをここまで明確に相対化した文章を、読んだ記憶がない。「新しい歴史はまだ構想されていない」と言いつつ、蓮實さんの頭の中にはその展望があるはずだ。まとまった形で読めるときは、来るのだろうか。
講演の雰囲気が充溢する「ショット映画史」 ★★★★☆
◆もともとは、せんだいメディアテークでの講演をもとにしたものです。それだけにとても読みやすい。読みやすいけれど、内容は充分な深度をもっていると思います。
◆国籍、階段、組み合わせとしてのショット。そして最後はゴダールの『映画史』の解読。

◆全体としては、流動性を称揚しています。失われた時代へのノスタルジーを感じさせるところも魅力。映画の図版(カット写真)が多数入っているのが映画ファンには嬉しいところでしょう。巻末の映画一覧も駄目押しとして参考になります。