贅肉を削ぎ落とすことの大切さ
★★★★★
本書を読み、短編の名手だったレイモンド・カーヴァーが、その修行時代にヘミングウェイのシンプルで無駄のない文体に範を取ったというエピソードを思い出した。本書は小説を書くための指南書ではないが、無駄を削ぎ落とすことの重要性を説いているという点では、このカーヴァーのエピソードと相通じるものがあると思う。
私は仕事に関連して、ときどき雑文を書かなければならないときがある。つい先日もそういうときに、本書で学んだことを念頭において文章を書いたつもりだ。その中で特にいくつか参考になった著者のことばを列挙する。
・読者は君の考えたことや思っていることに興味はない。知りたいのは君が何をしたかだ。
・読む者を納得させるのは実例、エピソード、事実である。理屈や蘊蓄ではない。
・そういう気がなくても、自慢話を押し売りしていると思われる書き方はやめる。
・短い文章の中の説明は、贅肉になる。文章も体も、贅肉はない方がすっきりしていい。
・読みやすくわかりやすい文章の基本は、ものごとが起こった順に書くこと。
・声に出して読みにくいところは、読みやすいように直す。
人間はだれしも自分中心になる傾向があって、文章ひとつとってみても必ず「自」が出てしまうものだ。「自の強さ」が限度を超えてしまうと、それはもはや雑音になり、読者にとっては「嫌み」に聞こえてしまう。本書は、新聞記者になりたいと思っている人だけでなく、日々なんらかの文章を書く機会がある人にはかならず益するところがあるはずだ。上に挙げた著者のことばを頭に入れておくだけでもずいぶんと文章改善に役立つだろう。
最後に事実確認を。著者は川村二郎という方だが、ヘルダーリンの翻訳などで有名なドイツ文学者の川村二郎氏とは別のひとである。こちらの川村氏は朝日新聞の編集委員をされていた方です。
作文を学びたい人にはもってこい
★★★★☆
著者が一般の人の作文を赤ペンで添削していて、添削される前と後の文章を比べると、見違えるほど読みやすくなっていて、「あぁ、こうすれば読みやすい作文になるのか」と納得する。
読んでいくにつれ、「あ、これはいい作文だな」とか「こうすれば読み易くなるかも」と徐々に文章に対して敏感になっていくのが分かる。
実際に作文を書いてから、この本を読めば、自分の書いた作文の悪いところが分かります。
文章はひとりよがりになりがちだけど、「文章は、わかり易く具体的に書けばいいのです」という著者の力強いメッセージが込められていると思う。
これを何回も読んで新聞社の筆記試験を通り、新聞記者しています。
新聞記者を目指している人は、ぜひ!
作文対策にお勧めです。