この本を読んでもイスラエルのガザ侵攻を支持出来る人は居るか?
★★★★★
私は、物事を公平に見る様に努めて居る。だから、2008年12月27日にイスラエルが開始したガザ侵攻についても、決して、パレスチナ人の主張だけを鵜呑みにした積もりは無い。イスラエル側の言ひ分にも耳を傾けた積もりである。2008年暮れのガザ侵攻において、イスラエル市民の多くがこの侵攻を支持した背景には何が在ったのか?「ジェニンの虐殺」において、パレスチナ人は、現に誇張された主張をした様だし、パレスチナ人の言ふ事を鵜呑みにしない様、私は、十分心掛けた積もりである。しかし、やっぱり、この侵攻は、「セキュリティー(安全保障)」等と言ふ言葉で正当化しうる行為ではなかったと思ふ。その事を、この本は、事実を淡々と語る事によって証明して居る。イスラエルのガザ侵攻を支持する人々は、この本を読むべきである。
(西岡昌紀・内科医/東京裁判が開廷した日(「憲法記念日」)に)
ドンパチでなく、住民目線の被害を知る。
★★★★☆
2008年12月27日〜翌年1月18日(撤退完了は20日)にかけてのガザへの軍事攻撃に対して、緊急医療支援として救急セットの配布とトレーニング、栄養失調児へ食料・先天性代謝異常疾患の子どもへ治療用ミルクの提供を行ってきたJVC職員による現地報告。
ガザ住民の悲劇は、イスラエルによる100倍返し攻撃だけにあるのではなく、PLOに属し長年自治政府を運営し続けた結果官僚主義や腐敗にまみれた、(現在ではヨルダン川西岸地区を支配する)ファタハに対し、住民はNOを突きつけハマースが第1党になったにもかかわらず、PLOのアッバース議長兼自治政府大統領はハマースを排除、ハマースがガザ地区を支配する内戦状態になり、米とイスラエルも介入し、敵対地域として経済封鎖が行われている事の、何重もの苦難による。
また経済的利害を背景にした、部族や小規模派閥によるガザ各地の支配もあり、国連要人も「深刻な人道的影響を及ぼす、人間の尊厳に対する暴行」と評すが、石油や食料さえ手に入れられない中、家族・親類で攻撃による死傷者がいない者はない程のすさまじい攻撃におびえながらの生活はいかなるものか。
本書には前述のような説明が充分なされているとは言えず、年表でも補足すべきで、文体についても新聞記事的で読ませるルポではないといった欠点もあるが、日本がイスラエルを支持する米の補完国である以上、看過できない問題として広く読まれるべき書である。
尚、ハマースはイランに資金・武器面で支援されており、アラブ諸国でさえも支持しない国があったが、ガザ侵攻を契機にシリア、カタール等が支持を打ち出し、西側諸国も公式に接触するようになり、オバマでさえも発言からは反イスラエル的になってきたとうかがえる現状である。
類書の『ガザの悲劇は終わっていない―パレスチナ・イスラエル社会に残した傷痕』の方が、よりジャーナリスティックであり、そちらもお薦めする。
ニュースでは伝わらないガザの声、そして営み
★★★★☆
本書は、ハマスが政権をとった2006年から、大規模軍事侵攻の爪跡も生々しい現在までの期間について、ガザ地区の市民の声・様子を中心に、国際社会の動きも含め、つぶさに記録したものである。そしてこの中で圧倒的なのは、ガザ市民の声だ。
本書を読んで思わずにいられないのは、この声を受け止め続ける著者のことである。彼らの声をもっとも痛切に理解できるのは、著者自身だ。現場を知らない私ですら胸の苦しくなる彼らの声を、身を切るような思いで聞いていたことだろう。
それと同時に思うのは、よくもこれだけの関係を築いたもんだということだ。本書には、彼女の活動についての記述は少ない。彼女と声の主たちの関係にも、それほど触れない。しかし、それのもたらしたものは、人々の声から十二分にうかがい知ることができる。
本書には度々「割れた窓」というモチーフが現れる。それは数人の市民の声の中に現れてくるだけに、破壊された生活の象徴として強く頭に残る。
その一方、これだけ悲惨で、不条理な境遇にも、当たり前に生活があることに気づかされる。
今年一月の停戦直後から栄養センターの活動再開に動き出す彼女たちが、私たちと比べて特別強いわけではない。
ガザであれ日本であれ、そこに人がいれば、自ずと生活が生まれる。その当たり前の営みを再発見した。
ガザ市民の心情を理解し、彼らの目線から見たガザ情勢を知るにはこの上ない一冊であると同時に、人情の泥にまみれて働く国際協力NGOスタッフの煩悶を垣間見ることのできる一冊でもある。
現場目線・・・
★★★★★
日本では報道などを通じてしか窺い知れないガザ地区の現状。
新聞や雑誌の記事で、ある程度の知識はあるつもりでも、この著作に
触れると生の感触を伴ってパレスティナ人の苦悩や力強さが伝わってくる。
それというのも現場で長く支援の仕事に従事してきた筆者の視点が
飽くまでも一般の市民や子供たちに立脚しているからだろうか?
和平交渉など上位の政治レベルの話題が優先的に報道される状況に比べて
一般市民の、もっと切実で単純な平和への希求が感じられる。
複雑にからみ合った紛争の歴史的な展開にも触れられていて、それはまるで
永遠に解けないパズルのような複雑で難解な問題だと「さじ」を投げてしまいたくなるが
ガザの市民にとってはまさに今日・明日の生活の問題だと、改めて考えさせられた。
また一方では現地で政権を担っているハマスが必ずしも市民の支持を得ていないなど
これまた市民目線の貴重な情報にも触れられている。
遠く離れた日本から現地で支援活動を行っているNGO団体(JVC)のブックレット
シリーズ第2弾とのことだが、ジャーナリスティックでもなく学術的でもない、こうした
新しい視点の情報発信が新鮮かつ説得力に富むと感じさせられた。
ガザが伝わる!!
★★★★★
昨年末のガザへの侵攻は衝撃的なものでした。今では、それを報道するメディアは皆無ではないでしょうか。そんなイスラエル軍によるガザ侵攻と、その経緯からその後を、その真っ只中で生きたパレスチナの人々の声と視点から綴ったこの本は、日本に住む私たちが普段目にしないで済むようなこの問題に関心を持つこと、その大切さを伝えてくれます。