「絶望」に酔える人のための小説
★☆☆☆☆
「絶望」に酔える人のための小説。
気持ちに余裕のある人ほど、「絶望」などネガティヴな言葉で自分を説明したがる、
ある種裕福な人の自己満足感を感じてしまいます。
頻繁に使用される「絶望」という言葉がひとりよがりな言葉にしかきこえませんでした。
その点が気になり、読みづらく感じました。
孤独と絶望
★★★☆☆
恋人によって外の世界と繋がっているのだと感じると同時に
恋人によって、恋人の世界に閉じ込められていると感じる。
その中では、恋人が全てだから。
それが後も先のない恋ならなおさら・・・
幸せを感じられるのは恋人の世界にいるとき。
しかしちょっとした隙に、絶望と孤独がやってくる。
不倫する女性、もう若いとはいえない女性の心情を見事に描いていると思う。
江國ワールド
★★★★★
再び江國さんワールド。 独特な緊張感の空気を感じる作品でした。 主人公はどうなっていくのか、とっても気になりながら読みました。
愛しすぎて、苦しい
★★★☆☆
ある一人の男性を心より愛しすぎてしまった
悲劇的な幸福話。
主人公の女性はある程度世間からも認められている画家
大切な彼氏は、主人公をとても愛しているが、男性として
ずるい一面を持ち合わせている人。
今の生活になにも不満は無いはずの主人公だが
読み進めていくうちに、じょじょに落ちていく。
主な原因は彼氏だと思うが、ちょっと違うと思う。
彼氏を愛しすぎてしまったせいか?愛し切れなったせいか?
私は幸せは自分の中にあり、自分で決める事の様に感じた。
生活は、ウエハースの椅子 に座っているような
ちょっとバランスを崩すと潰れてしまう様な、だからこそ
幸せを感じることの出来るものの様に、この本を読んで思った。
空虚な完全
★★★★☆
38歳の「私」の生活を描いた小説。
「私」は画家で、一人暮らし。
愛し愛される「恋人」がいるけれど、「恋人」には幸福な家庭がある。
「恋人」のいない時間、「私」のもとを訪れるのは
幼い日の記憶と、慣れ親しんだ絶望。
それらが淡々とした美しい文章で、けれど秘めたる情熱をすかして描かれています。
この小説を読んで、初めに気付くのは固有名詞が登場しないこと。
「私」「恋人」「妹」「父」「母」。
主な登場人物である彼らは、通称で呼ばれることはあっても、
特定の名前で呼ばれることはありません。
一方で、「絶望」という観念は擬人化され、「私」のもとに「やあ」と言って会いにきます。
そんな奇妙なモノローグは、具体的で丁寧に描かれる日常の風景とは対照的で
このお話の静謐な緊張感を生み出しているように感じました。
そしてその独特の印象こそが、このお話のすべてです。
傍目から見ると、きちんと大人として社会生活を送っているような「私」は
幼いころからの延長線上にしか存在していない自分を自覚しています。
そしてそんな彼女がかけがえなく愛している「恋人」は
彼女のある意味で安定した生活を壊す、異物であり
彼女と「絶望」を切り離すことなどできない。
大きな変化は訪れず、また生活は続いていく。
そんな不毛で、不健全で、悲しい姿なのですが
同調してしまうような、完成された物語でした。