楽しめました。
★★★★☆
高校二年生の遠野綾は、部活を通じて他校生の村瀬一哉と知り合い、携帯を通じて互いに友人以上の気持ちを持ち始めた。が、一哉は事故死してしまう。一哉の通夜から帰った夜、綾の携帯へ一哉から……。
SFミステリーとして、おもしろく読みました。パラレルワールドを携帯で繋ぐという発想や、高校生の世界、登場人物、など、うまく複線がはってあり、謎解きも、サスペンスも、十分楽しめました。
青春小説としてのせつなさが胸に迫ってこなかったのは、登場人物の心の動きの表現力が今ひとつなのかも知れないと思いました。
SFミステリ
★★★★★
切ない青春恋物語が読みたくて購入。
――が、
どうやらミステリーに重点を置いているようで驚いた。
あんな平和そうな表紙なのに…
絶対に会えない二人が起こした奇跡、それなのに妙に現実めいていてそれほど欝にならずに済んだ。
読みやすいし、ちょっとでも気になるなら買うべき。
オタクに媚びてない作風
★★★★★
電撃受賞作ということで購入を決定しました。女流作家というだけあって、ミミズクに通ずる描写の繊細さが光ります。
並行世界独自のトリックも良く出来てるなぁと感心しました
丁寧に紡がれた良作
★★★☆☆
パラレルワールドを軸とした青春SFミステリ。
携帯電話だけで互いを想う少年と少女が繋がっているという設定が非常に秀逸であり、また魅力的。
恐らく二人の年代にとってはあって当たり前のものだからこそ、何気ない会話や些細な喧嘩が非常に重たく、二人にのしかかっています。
恋愛モノの視点から見ると、ネタバレになるので詳しくは書けませんが、プレゼントを渡すシーンや、マックでのシーンなどは、読んでいて切ないものがあります。ラストの綾の淡い心情描写などは特にいい。それぞれ設定をきちんと生かしているあたりがうまいですね。
また、最後にお互いの世界の繋がりが拍子抜けするほどあっさりと途絶えてしまったのも、個人的にはかなり好みです。
ミステリモノとして見て行くと、携帯電話を通じた捜索や、お互いの世界の違いを探っていく過程など、ミステリとしての枠組み作りにも積極的に用いられており、この辺は頑張っているなあという感じ。序盤から張られていく伏線も、とても丁寧です。
ただ、張り方が丁寧すぎて「ああ、これ伏線だな」というのがほとんど解ってしまうのはちょっといただけません。
また、この作品の軸となっている「パラレルワールド」という設定は、ミステリ的にはほとんど絡んでこず、この設定がなくても謎解きは十分可能であり、そこら辺は大きなマイナスだと思います。
ミステリとしての構成、伏線の回収などはとても丁寧で、それ単品でもいい感じなんですが、この作品の売りであろう「携帯電話でつながった並行世界」をミステリにしっかり絡めてくれないと、こちらとしてはちょっと消化不良の感が否めません。
しかし、これがデビュー作という事で、これからの活躍に非常に期待が持てる作家だと思います。
とりあえず次回作は買いですね。期待してます。
話題の第15回電撃大賞、の金賞
★★★☆☆
『パララバ―Parallel lovers』です。パラレルラバーズの略です。
高校生の恋人が、平行世界に分かれてしまい、その中で、自分が殺された謎を解く、という話です。青春恋愛小説かと思っていましたが、たしかにその要素はありますけど、ほとんど謎解きミステリです。
登場人物が、主人公と、恋人と、ラメル先輩以外はあまり印象に残らず、なので最後の犯人捜しの時に説得力を持ちにくかったです。口絵カラーイラストも三人だけですし。
あまり頭が良くなさそうな女子高校生主人公の語りという文体が、内容とちょっと乖離を感じるというか、作者は文章力はあるのだろうけど、それが殺がれてしまっている感じも受けました。
途中の展開が、頭よくなさそうな主人公の行動だから仕方ないとはいえ、主人公がピンチに陥るためにわざわざ不自然な行動をとらせているご都合主義が臭いました。
友人の言動や、ラストの展開など、あまり気分の良いモノではなかった部分もありました。
謎解きとしては、細かな伏線回収については良かったと思いますが、総じていえば普通。ただ、これならパラレルワールドであるということが、ちょっとしか活かされていないようにも思いました。
総括としては、冒頭の引き込みはなかなか良かったですが、ミステリとして謎が解けた時に読者が感じる爽快感、読み終わった時の読了の余韻などでは惜しいです。単発作品として、それなりに楽しめるとは思います。