明るい中にも伏線あり
★★★★☆
「プシュケの涙」の続編であり、二部構成という点も変わりませんが、
明るい雰囲気の物語になっています。
本作の主人公は美大生・春川とグラビアアイドル・Aですが、
2人とも不器用ではありますが前向き(楽観的?)であり、
読みながら思わず笑ってしまう箇所がありました。
ただし、ミステリー要素もあり、徐々に由良が布施正道に拘る理由も
明らかになっていきます。
「プシュケの涙」と比較して★を一つ減らしましたが、
読み終わった後に笑顔になれる作品です。
前作「プシュケの涙」と繋がりあり……どっかに書いておいてほしかった
★★★★☆
同一の登場人物をからめての中編2本。
前半は怪しい芸術家を追ってきた美大生が主体。
この美大生もまた謎を持っているので独白は控えめ
妖しい青年と出会って、共にある芸術家の謎を探ります。
後半はAと名乗るグラビア女優の恋の話。
彼女は鬱々とそしてキラキラと自分の思いを語ります。
男女の違いがあるとはいえ全く異なる語り口の主人公と物語
あまりにまとまりに欠けているなと思う反面どちらの主人公も魅力的なので
それぞれで一本の長編が読んでみたいです。
そんな中私のお気に入りは「ねう」という少女。
彼女がまっすぐ成長してくれるのを祈るばかりです。
なるほどこういうことか!
★★★★☆
プシュケの涙の続編にあたります。前作が大変読みやすく、内容も好きなものだったので、購入しました。
登場人物も新たに物語も進みますが、前作と共通している部分があります。
それは「由良兄弟を、二つの視点から描いていく」という事です。
ネタバレになりますので詳しくは書きませんが、
前作は、彼らに関係する「男」側の視点と、「女側」の視点で描かれた、二部構成になっていました。
今回もその形式で描かれており、さらに言うならば、「ミステリードラマ」と「恋愛ドラマ」という枠組みで話は進んでいきます。
前作から魅力的なキャラクターも健在で、残された謎が少しずつ明らかになって行きます。
前作を読んだ人なら、「なるほどこういうことか!」と納得すると思います。
前作に比べ、インパクトが弱く感じられ(前作が強かったのもありますが)、ゆえの☆四つです。
前作を読んで楽しめたのなら、購入は間違いないでしょう。
三部作最後となる「セイジャの式日」が来月25日に発売を控えています。
楽しみです。
拡散する血脈、停滞する血脈
★★★★☆
『プシュケの涙』の舞台となった時期から三年後の人々の姿を描く。共通して登場する人物もいるし、以前の事件の事後処理みたいな部分も含んでいるけれど、新たな人物とその物語がメインだと思う。
テーマは「血脈」かな。血脈は過去から現在を経て未来につながるものであり、有性生殖である限り、必ず二つの血脈が結びついて続いていく。この結びつきのパターンにはいくつかあって、一説によると、自分の遺伝子から遠い遺伝子を選択して生物の多様性を確保していくとも言われる。
人間同士の結びつきは、このような動物的な面と共に、打算的な面も併せ持つ。その両極端が、国中から美姫を集めた後宮を持つパターンと、近親で結びつき財や権力が拡散しないようするパターンだろう。
タイトルにあるハイドラとは、ヒュドラとも呼ばれる9つの頭を持つ怪物だろう。ヘラクレスに退治されるハイドラの母はエキドナと言い、彼女と彼女の子オルトロスとの間に生まれたのが、スフィンクスと伝えられる。
スフィンクスは謎を出し間違ったものを食い殺していたが、テーバイ王となるオイディプスに正解を出され、自ら身を投げて死ぬ。このオイディプスは、エディプス・コンプレックスの語源にもなっており、自らの父を殺して実母との間に子をもうけるのである。
表面的には、前作ほど衝撃的な内容ではないと思う。そういう意味では安心。
ただ、タイトルから勝手に深読みすると、色々とドロドロした内容を含んでいるのかな?気づかないだけで。