これが完全版
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昔からトリュフォーが好きで関連本はほとんど読んでいて、この本の英語版ももっている。しかし今回出た日本語版のほうが注も多いし記述が詳しいから、これが完全版だろう。英語版にない箇所がある。訳も読みやすい。最近インタビュー集も出たしこの勢いで未刊の書簡や評論も早く出されたし。
読み応えずっしり
★★★★★
トリュフォーにまつわる事実や、彼の内面が克明に描かれた本です。今まであまり紹介されてこなかった、政治との関わりや、公私共々の交友関係(特に女性関係)の実際のところが詳しく書かれています。例えばフランス五月革命やアルジェリア戦争などは、当時を生きたフランス人の生涯を語るには欠かせない重要事項だと思いますが、そうした出来事に対する考えやアクションについても知ることができます。何よりも、厳しい批評に傷ついたり、興行上失敗したり、なかなか進まない企画に翻弄されたり、病気やトラブルに苦しんだりしながらも、まさに転がる石のように、走る馬車のように、前へ前へと駆けた生き様が感動的です。辛い時も、映画で自分を救う。映画が、生きるすべ。映画に逃避し、必死ですがっているかのようなトリュフォーの姿がひしひしと伝わってきて涙をそそられます。映画なしでは生きられない、天性の映画人。著者の筆致もニュートラルで、特にスキャンダラスに書き立てたり過剰に飾り立てたりなどはせず、ひたすら真摯に記したという感じで、好感がもてました。ボリュームもさることながら内容もとても濃い一冊です。
お勧めできません
★☆☆☆☆
ざっと読んだ感想ですが、ありとあらゆる資料、発言を集め、整理しただけのような内容だなあと思いました。トリュフォーに関する情報量は過去最大で、仕事からプライベートまで存分につめこまれていますが、そこから彼の真の人物像が浮かび上がったとこまではいっていないのです。彼の作品についても製作過程は興味深いですが、その魅力については皆無的に書かれていません。また写真も所々に寄せ集められて、本文と一致せず、不満感が残りました。作者はトリュフォーファンではないのでしょうか?簡潔に言えば、この本はよっぽどのトリュフォー好きではないとおおよそ価値の無い本です。まだ彼の事を知らない人には、山田宏一さんの一連の著作をお勧めします。どれもこの本には無い彼の魅力を十二分に伝える、名著です。