"Long Tall Dexter"ことデクスターゴードンは、ビーバップ全盛の４０年代から活躍していたベテランである。薬物治療による中断を挟み６０年代半ばから、ＮＹＣを離れデンマークはコペンハーゲンに移住した。活動の拠点をヨーロッパに移した後も、年に数回ＮＹＣに戻り新作録音を続けた。そんな頃にアメリカで録音され、Prestigeからリリースされたのが本作だ。昔馴染みのミュージシャン達とのセッションでリッラクスできたのだろうか、大河の流れのような大らかでスケールの大きいデクスターのテナーのトーンが聴かれる。パワフルなテーマを持つタイトル曲では、重量感溢れるテナーが緊張感のあるバックのサウンドにプシュされる。デックスのスピード感あるプレイが、５０年代の絶好調時を彷彿とさせる。お得意のバラッド"Body & Soul"も相変わらず泣かせる。バックのトミーフラナガンのピアノも見事なドラマを演出する。珍しいところでは、クリスマスソングを取り上げているが、完全にデクスターのものになっている。ベテランジャズマンにしか出せないシブ〜イテナーがデクスターの売りだが、久しぶりに聴かれるパワフルで雄弁なテナーの鳴りがどこか新鮮味を感じさせすこぶる心地良い。そこが本盤の売りかな。１９７０年の録音である。この後デックスは、引き続きアメリカ録音を続けることとなる。

本作品は何を差し置いてもまず、デクスターとトミフラの相性の良さが前面に出ると思う。これまでデクスターの作品を色々と聞いてきたが、バド・パウエルより、ソニー・クラークより、バリー・ハリスよりトミフラが一番相性が良い。

全６曲中、特に良いトラックだと思うのはスタンダードの２曲である。特に「ザ・クリスマス・ソング」、トミフラのイントロがまず絶品であるし、この曲のテーマの素晴らしさがデクスターによって最大限に活かされている。クリスマスと言わず、毎日聴きたい。