このケン・ジョーダンとスコット・カークランドのふたりを、アリーナを歓喜させる同系統のデュオ、ケミカル・ブラザーズとそのビッグ・ビートと比べるリスナーはいまだに跡をたたない。だが本作のサウンドは、上機嫌のときのニッツァー・エブ、あるいは不安から解放されたときのフロント242の方により近くなっている。このデュオは、元リンプ・ビズキットのウェス・ボーランド、元カイアスのジョン・ガルシアといった著名で人のよい自由闊達(かったつ)なアーティストを招いて力を借りている。だからといって、ふたりが羽目をはずしてビッグ・ヘアー・メタルの強烈なミックスをするわけがない…とはほんのちょっとも思わないでほしい。
本作の一番のお楽しみは、シンガーとしても売り出し中の女優ミラ・ジョヴォヴィッチが歌う「I Know It's You」で、もつれ合うキーボードの森の中をジョボヴィッチの鼻をつまんだような歌声が縫うように突き進んでいく。大げさなテクノ・ジャムも取り入れた本作は、文句なく味わい深いパーティー・レコードとなっている。このムードにどっぷりとつかりたいと思うならば、この重低音に映えるくらいまで照明を落としておくことだ。(Matthew Cooke, Amazon.com)
1stや2ndに比べると、サンプリングの奇抜さや、より緻密になったブレイク・ビーツ、ヴァン・ゲリスやウルトラ・ヴォックスを思わせるモジュレーションのかかったシンセが顔をのぞかせるが、基本的にに大きく変わった印象はない。相変わらず終始クールなグルーヴを展開している。
なお、日本盤である本作にはボーナス・トラックにマッド・カプセル・マーケッツのKYONOが参加した曲が収録されていて、KYONO(あるいはMAD)らしいラウドなヴォーカルが聴ける。