日本を代表する東京混声合唱団の名合唱を聴くことができます
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瀧廉太郎、山田耕筰などの近代歌曲の名曲を林光が合唱曲にしたものです。林光が書いたライナーノーツによれば、作曲年代は1964年から1975年にかけて、東京混声合唱団の委嘱により、小澤征爾、岩城宏之、田中信昭氏らによって初演されました。どの曲も原曲の持つ味わいを壊さないような素直なアレンジで、とても歌いやすく聴きやすい作品に仕上がっています。
前半の10曲は1973年の収録で、後半の10曲は1980年の録音です。時代は経ちましたがその価値は全く不変です。林光の卓越したアレンジがステキで今でもよく聴くCDです。
「荒城の月」は、混声8部のア・カペラで、合唱の厚みから栄華必衰という無常観が如実に伝わってきます。「箱根八里」の堂々としたピアノ伴奏から往時の武士と近時の壮士の力強さが出ています。
「カチューシャの唄」の前奏のハミングが美しく、大正ロマンを感じさせるこのような歌を後世に伝えてほしいですね。「ゴンドラの唄」の最初の2連をあえてユニゾンで表現することによって詩の味わいを最大限に表現しています。幼き日を思い出させるような「叱られて」の見事に美しい抒情性を大切にしながら編曲しています。
「ペチカ」は懐かしい気持ちを感じさせる前奏のハミングパートが大好きです。ピアノ伴奏は平易ですが、美しい音を紡いでおります。「この道」の持つ味わいを壊さない様に最初の部分はア・カペラで歌われており、流れるようなピアノ伴奏のアルペジオが合唱を一層引き立てています。「待ちぼうけ」は、巧みなテンポの変化で鮮やかに情景を描いています。「かやの木山」も簡単なピアノ伴奏ですが、実に味わい深いアレンジで心に残るものとなっています。