仏教のルネッサンスを求めて、前向きに
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まずは仏教国日本の他力の思想を確認して、イスラム教に対立するキリスト教の主流を占めるアメリカに渡った。アメリカの「心の穴」をどう埋めるか、それが本書の、もっと広く言えばアメリカの課題でもある。
サクセス(成功)やビクトリー(勝利)というものを目指して、自分のキャリアを磨いていく国。自力の国の深い闇、その絶望からのスタートが必要とされるとみる。「他力」の英文版「TARIKI」はアメリカ諸情勢の中で数年前より注目されている。他者を排撃し、こだわる自力を捨て去り、すべてを大いなる力にゆだねる心「仏教の他力本願」をすすめる。
人生における絶対的な陰の部分を受け容れること、「慈悲」と言われるマイトリー(慈)もさることながらカルナ(悲)の方が大切であると説いている。無力のものだと思う心があって初めて救われるとみる。自著の翻訳「TARIKI」が宗教学の権威サーマン教授が取り上げてくれ、共鳴してくれ、対話したことを感謝をこめて報告している。彼の国に一石投ずることを喜んでもいるようだ。
さて、それが広くキリスト教国に浸透できるかどうかは疑問ではある。いい気になって入られない、越えられない宗教対立が牢乎として横たわっていることを知らねばならないことではある。
「インドで、アジア諸国で、そして、アメリカやヨーロッパで、仏教のルネッサンスが始まろうとしている」と本書は結ばれている。「仏教への新たなる旅」…このような前向きの意気込みが最も大切なことだろう。