儒教の国は「和諍」(わじょう)の国
★★★★☆
仏教への旅シリーズ第二段では、日本に仏教をもたらした韓国を訪れる。
朝鮮半島はその昔、高句麗、新羅、百済の三国に分かれていた。四世紀から七世紀頃のことである。
現在の韓国西部を指す百済から、仏教は日本に伝えられた。
韓国は古くは儒教の国、最近ではキリスト教のイメージが強いが、仏教も根強く支持されて
いるという。
しかも、その教義は華厳を祖とした厳格なものであり、出家信者は一部の例外を除き
肉食・妻帯をせず一生を信仰に捧げるという。在家信者もまた熱心に五体投地を繰り返す。
これだけを見ても、日本で広まった仏教とその出発点であった韓国で信仰されている仏教との
ちがいは明らかなようである。その背景にあるものは一体何だったのか?
「和諍」とはさまざまな宗派や考え方、二つの相反する思想を融合させてゆこうとする
考え方だという。ここにも韓国の宗教を考えるひとつのヒントがありそうだ。
幼少時に満州からの引き揚げを経験した著者にとって、今回の旅には複雑な思いがあった。
それゆえ、本書は韓国民にとっての仏教の意味を問うのみならず、著者の人生観、宗教観が
垣間見えるものとなっている。