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合理的な愚か者―経済学=倫理学的探究

価格: ¥3,150
カテゴリ: 単行本
ブランド: 勁草書房
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正義への欲求 ★★★★★
彼の厚生経済学批判の根幹を(強引に)一言で表すと「人々は効用のみならず正義への欲求も持っている」という点に集約されるだろう。

表題作「合理的な愚か者」では、効用(選好)に基く経済理論を批判するのだが、そこで批判の論拠として出すのがコミットメントである。
コミットメントというのは端的に言えば「正義の実現への希求」であり、この概念は選好順序の問題としては取り扱えない。
なぜなら、効用が純粋に帰結のみに作用するのに対し、正義は実現までのプロセスや行為者の意図に依存するからである。

「何の平等か?」では、功利主義やレキシミン原理が、端的に言えばごく一部の情報のみで全体の配分を考えているという点を挙げて批判する。この点は「個人の効用と公共の判断」でも取り上げられている。
そこで登場するロールズ的発想は、同じ効用を得るでも、正義に乗っ取るか否かという点が関わるのだという視点である。
(ただしロールズ的な思考は同様に基本財の配分にのみ着目するという欠点があるためにやはりセンは批判するのだが。)
そこで彼が提起するのが「潜在能力」論である。(この点は福祉の経済学―財と潜在能力)に詳しい。

あとは有名なリベラルパラドックスやパレート伝染病の話だが、これは「きめ方」の論理 ―社会的決定理論への招待―にわかりやすい解説が載っているので、そちらも参照するといいだろう。
社会的選択理論の必読論文集 ★★★★☆
本書に載せられた論文は、現在のセンの理論を理解するために重要であるだけではない。社会的選択理論を学ぶ上で必ず読まなければならない論文が載せられていると考えられる。

 例えば、権利の定式化についての論争は『パレート派リベラルの不可能性』においてSenがはじめて行った自由の定式化に対する批判から始まったものである。このようなトッピクを研究しようと考えるならば、まずこの論文は読まれなければならないであろう。他にも功利主義への批判など、Senの良識ある考え方には学ぶべきところは多いのではないのだろうか。

 ただ、訳本で削除された論文がかなり多いのが残念である。

名論文が目白押し ★★★★☆
「パレート派リベラルの不可能性」「合理的愚か者」「何の平等か」など、社会的選択理論を学ぶ人にとって、また、センのような経済学に倫理学の考え方を取り入れることに興味をもつ人にとって、とても重要な論文がのっているとおもいます。現在の社会的選択理論のいくつかの問題は、これらの論文から発せられたものです。20年以上前の論文ばかりですが、センのするどい思考に感動させられます。ただ、原典からかなり削除された論文があります。