宗教が発生する瞬間を描いた描写としては、コリンウィルソン『アウトサイダー』のイギリスの伝道家ジョージ=フオックスの章が僕が読んだ中ではいままでで一番見事だと思うが、このSFも小説としてはなかなかによかった。なによりも狂気に聖化された宗教家と皇帝フェチカ2世の会話のシーンは、痺れた。ローマ帝国の皇帝たちや老練な元老院たちは、きっとこのような決断を迫られたんだろうと、想像力をかきたてられた。地球人類をはるかに越える文明があるとすれば(統計的確率的にはあるのが妥当だと天文学者はいう)地球で宗教が発生したのも!、これと似たきっかけであったとしても、不思議ではないんですよね。うーん、こういうの知的シュミレーションというか空想を拡大させるのってまさにセンスオブワンダーだなぁ。