科学および「事実」は、本当に人間と独立に成立するか
★★★★☆
科学は「客観的真理」から成り立っており、それはだれが、どんな人が発見しようと、
その人間のあり方とは関係なく成立する (31頁より)
これは、科学が「客観的」かつ「価値中立的」なものであるという常識的な考えであり、
本書の前半部ではこのような考え方が詳しく解説されています。
後半部ではそれを踏まえた上で、本当に、科学は客観的で人間のあり方とは無関係なのか
ということをあらゆる方向から検討してゆきます。
最終的には、上記の常識は筆者によって否定されることになり、
読了後は、なんだか自分の頭をハンマーで「ガーン」と叩かれたような感じがしました。
科学論に興味のある高校生から読めるのではないでしょうか。
*ブログに少し詳しめに自分の理解したところを書いてみました。よければご覧ください。
http://ameblo.jp/taonomichi/entry-10682492957.html
30年前の問題意識
★★★★☆
もう新刊書店では見つからないかも知れず、評者もアマゾンの中古ルートで購入して一読。前半はいわば従来型の常識的な近代科学論、後半はそれをがらりと異なるアングルからとらえ直した新科学論、という構成で、ともに内容すこぶる分かりやすく、短時間で読了できた。ただ、「自然科学はいま岐路に立っている」(序にかえて)という、刊行された1979年当時の著者の問題意識は、30年以上が過ぎた現在も通用、あるいは研究者に共有されているのかどうか――。この点、評者には判然としないままだが、科学者の自然認識のあり方とそれへの自省自体は、本書後半に示された新科学論の水準程度にはあるだろうことを期待したい。
壁をとっぱらう
★★★★★
本書は科学がどのような営みであるかを考え直す本である.前半では現在多くの人が(無意識に)認めているであろう近代科学(17世紀以降)の常識がどのようなものであるかを確認する.後半では「文化史的観点」と「認識論的観点」の二点から近代科学の常識に見られる矛盾を指摘し,科学という営みがどのようなものであるかを見つめなおす.
近代科学の常識の例としては,例えば
・宗教は科学に干渉してはいけない
・科学はすべてデータから出発する
・データは与えられたもので,人間にはどうすることもできない
・科学技術の進歩とはデータ量の増加である
等だ.上記の考え方は多くの人が納得してしまうと思われる.しかし,実はここには矛盾が生じており,著者はものの見事にこれをひっくり返している.
科学がどのような営みであるかということを知っておく事は,科学を行う人にとっては非常に有意義なものであると思う.また,本書が与えてくれる最大の効用が著者によって示される新しい視点である.この視点は科学の営みを定義しなおすものであるが,本書によって与えられた新しい視点は科学のみならず,(どんなことでも)物を考える上で非常に参考になるものだと思われる.いい意味で自分の壁をひとつ取っ払ってくれた本.理系の学生にはオススメです!
「科学哲学」「科学史」の入門書
★★★★★
科学とは何かを考える本。科学のこれまでの歴史と、今のあり方について書かれている。著者は科学哲学・科学史の分野では著名な村上陽一郎氏。
前半では一般的に信じられている科学像を紹介し、後半でその科学像を打ち破る。「データは与えられるもの」「人が持っている偏見などがそのデータを歪める」「科学技術は時代が進むにつれ蓄積されていく」というような従来の科学の見方を否定し、新しい科学を論じる。
「専門的な書物を読んだことのない読者の方がた(例えば中学生諸君)にもわかっていただけるように、なるべく問題や術語をときほぐして説明することを心がけました」とはじめに書かれてある通り、難しい専門用語はいっさい使われておらず読みやすい。科学哲学について少し考える、そして科学史に触れる良い入門書であると思います。
とてもわかりやすい「パラダイム」論
★★★★★
おそらく中高生でもわかるようにかかれた「パラダイム」論。
サブタイトルの「「事実」は「理論」をたおせるか」が内容をよく表しています。
トーマス・クーンの「科学革命の構造」の方は書き方がわかりにくいので、これを読んでからそっちを読んでみるといいと思います。
大学入試とかで「評論必須ワード100」とかやっている高校生には、とりあえず科学哲学については、そんなので覚えるよりも、これ1冊読んだほうが絶対にいいです。オススメします。