球場は、ファンにとってのドリームフィールド
★★★★★
福岡人である評者にとっては、平和台球場はやはり特別な思い入れがある。
子どもの頃、たまたま親に連れられて行った平和台球場の内野席から、キャッチボールをしていた選手に声をかけたらそのボールを放ってよこしてくれた。平和台の観客席はグラウンドとはそれほど近かったのである。
草の汁のついたような(当時の平和台球場は天然芝)実に使い込まれた年季の入ったボールで、今にして思うと当時のライオンズ球団の経営状況が偲ばれるのであるが、子どもにとってはその「汚れ方」がまたカッコ良く思えたものであり、そのボールが我が家の宝物になったのは言うまでもない。ただ、何という選手がくれたものか、さっぱり覚えていないのが誠に残念であり、かつ申し訳ないことである。
時はめぐり、我が家の娘たちはホークスの応援に福岡ヤフー!ドームに行く。
明るく快適なドーム球場は、彼女らにとってもやはり心躍る「夢の場所」であるようだ。
本書は、「今はなき」球場がその「夢の場所」であった思い出とともに語られている。
中高年のプロ野球ファンには、絶対のお勧めである。
なお、前著あの頃こんな球場があった―昭和プロ野球秘史に広島市民球場を加え、各球場には「その後」を加筆してあるというスタイルである。