エイラ今までありがとう。お幸せにね!
★★☆☆☆
作者ジーン・アウル氏がこの物語を作るにあたって、先史時代をよく調べ、研究し、その上で自身の想像力をもってここまですばらしい物語世界を描き出したことには感服します。しかし、ストーリーの展開についてはシリーズ当初からのパターンの繰り返しで、魅力に乏しく感じます。
最初の『氏族編』で出合って以来、このエイラというたぐいまれなヒロインはすっかり私を魅了してしまい、その後のマンネリの連続にも屈せず私を本編までつれてきました。“うんざりするほどの旅”に私もつきあってきたわけです。今度こそ完結編と思ったのに、まだ続編があるとなると…
いくら舞台だけ丁寧に作りこまれていても、演じられるのが良くも悪くもアメリカンらしい低俗な群像劇ではさすがに限界です。ようやく故郷に着いたことだし、もうこのへんで個人的には『完』ということで。
それから、他の方もお書きですが、翻訳の文章が良くないですね。訳者はもちろんですが、この出版に関わった人は、この本の文章を読んで違和感を感じないのでしょうか。
最終巻まで、息切れしないでほしい。
★★☆☆☆
読みましたとも、上・中・下 全1342ページ。
氷原を越えるエイラとジョンダラーの長い旅もようやく終わり、二人はゼランドニー族の9の洞にたどり着きます。氏族(=ネアンデルタール人=ゼランドニーの嫌悪する平頭)に育てられたエイラは、予想された抵抗を予想通り克服し、無事ジョンダラー連れ合いになることができました。次にエイラを待ち構える試練は、一族の癒してであり、精神的よりどころ、巫女的立場へのゼランドニアへの召命です。
それにしても、なんてまあ、めでたしめでたしの話なんでしょうね。巻を追うに連れ、主人公二人の性交描写の克明さに飽き飽きしていましたが、「エイラの美しさとジョンダラーのカリスマ的魅力」にも食傷気味です。狩猟採集生活の細部描写は、相変わらず楽しいですがね。表紙のエイラたちも、身長が180&195もある、成熟した絶世の美男美女には見えません。
こんなに嫌いなところが多いのに、本当に何でこのシリーズ、読んじゃうんだろう。偉大なるマンネリ?
ハラハラドキドキは
★★☆☆☆
あと一冊で終われるのかってことだけになってきた。
まあ、無理だろうけど。
だらだらいつまでも続けてくれてもついていくけど、もうどうでもいい一冊になってしまったな〜。
有史以前の人々の豊かさに驚く。
★★★★☆
ゼランドニー族とともに暮らすようになったエイラは、2頭の馬と狼のおかげで
いつも注目の的となったが、それは同時に羨望と嫉妬をも生み出した。
膨大な知識と新しい技術。先入観を持たない公平な判断。どれをとっても非の打ち所の
ないエイラの支持者は増えてゆくが、それがさらに新たな嫉妬の元ともなってゆく。
現代社会に通ずる人の心の動きは3万5千年前から一滴の進歩もないようだ。
広告では、『‥エイラたちは、晴れてつれあいとして認められる。』となっているが、
実際は「縁結びの儀」の直前までで、この巻は終わってしまう。
結婚の様子は、下巻までお預けなので念のため。
それはさておき、本巻で特筆すべきは、特に洞窟に描かれた絵の描写だろう。
作者はまるでツアーコンダクターのように、二オーの洞窟、ラスコーの洞窟の壁画が描かれた
時代にまで読者を連れて行ってくれる。
誰が、何のために、どのように描いたのか。その技巧の巧みさはどのようにつちかわれたのか。
謎だらけだからこそのロマンがあふれている。
また、暮らしの様子の描写からは、おそらく何千という人々の集いを賄うだけの食料の豊富さ、
貯蔵の知恵など、意外な生活の豊かさを読み取れるが、それに比べて現代人は如何に汲々としていることか。
「足るを知る」ことの大切さを改めて感じさせられる。
後戻りのできない私だが、大いに反省させられた。
ただひとつ、残念なのは訳だ。
例えば、『‥いつの日か連中がおれたちに反撃しようと思いたったら、いったい
どんなことが起こると?』のような使い方を白石氏はされるのだろうか。
下訳そのままの翻訳かもしれないが、不自然で生硬だ。
何箇所か見受けられた。
これは決して揚げ足取りではなく、この物語のファンだからこそ申し上げるのだ。
エイラを応援する者の一人として、出版社の方にも翻訳の質の向上に努力をお願いしたいと思う。