インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

文学論〈上〉 (岩波文庫)

価格: ¥903
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
Amazon.co.jpで確認
読み始めて、それなりに面白いと感じる。 ★★★★☆
 漱石の文学論。
 漱石は力量においては、中学の3年間だけで英検一級程度の語学力に上昇したという非常な秀才であったらしいが、英国留学においてはコミニケーションがうまくいかず苦悩したあげく、発狂のうわさが帰国の留学生から伝えられるほどだったと云われていた。
 この本の序文にはそのときの苦い思い出つづられて、自分は官命によって留学し英語を学ぶつもりが果たしてかなわず、下宿に篭って英文学研究に勤しんだことが書かれている。序文はつとに有名らしいが、その後半に帰朝後も「神経衰弱にして兼狂人」にして親戚のものすらこれを認めたとある。この狂気が天才と紙一重的な作品を生み出したかは宮城音弥の「天才」を読むとその構造がわかるというものだが、たしかに狂気は作品を生みえる土壌と漱石自身が捉えていたことに、まず驚いた。
 しかし、それにしても、本書をとりあえず見てほしいところだが、「文学的内容の形式は「F+f」なることを要す」に始まり、容赦なく文学をこの式でズタズタにしていき、文学を数量的関係にみたてたり、分類してゆく。類型論というかジュネットという感じで構造主義の先駆のようだが、これほど読みにくくする必要はないだろう。気負いすぎである。こうした思いは当時の東大の学生にもあったようで、逆にその不評が当時の漱石いたく傷つけたようで「坊ちゃん」などにも恨みをぶつけているところが顕れているところだが、不評は無理もない。
 しかし、この文学論にぶつかって会得することはあるに違いない。なにしろ、漱石の文学を生んだのはこの文学論以降なのだから。