先生は天然だったかもね。
★★★★☆
おそらくノイローゼまっただ中にロンドンから、鏡子夫人にはまるで八つ当たりのように「入歯にしろ」と催促し、友人たちには「こっちにこれないか」とすがる。実直でいて過度にデリケートな人柄がしのばれるけれど、それも晩年に近づくと多くの弟子に慕われてやまない師の慈愛に満ちるようになる。
至って大真面目な文面にのぞいてしまう意図せぬ可笑しさ、漱石という人間の愛らしさを感じ受けてなりませんでた。
文士を押すんじゃありません、人間を押すんです。の名句に打たれるひとは今も多いはず。