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漱石の思い出 (文春文庫)

価格: ¥710
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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結局これが漱石周辺本の中でいちばん面白いのでは? ★★★★★
自分は漱石の周辺本(漱石自身が書いたもの以外の漱石本)をかなりの量バサバサと読んできたが、最近この本を読み返してみて思ったことは、おそらくそういう周辺本のなかではやっぱりこの本がいちばん面白いということである。(ちなみに虚子の書いた回想子規+漱石(これはちょっと短いが)もかなりおもしろい。) この2冊に共通なことは、漱石の日常の空気感みたいなものをそのまま正直に伝えようとしているために、漱石という存在が支離滅裂に描かれていることで、出来事のロジカルな関係性や意味をかなり無視した内容になっている。またこの2冊では漱石のネガティブな一面が正直に描き出されているので、そういった意味でも現実の漱石に近づけた気持ちになることができるのもうれしい。

たしかに研究者や弟子が書いた本にも面白いものはある。しかし結局そういう本は結局書いているひとのエゴというか主張というか希望によって漱石を型にはめ、美化し、磨き上げて立派な銅像にしてしまっているのがほとんどである。そりゃ漱石研究の結果として発表するわけで、「いろいろ研究したけど、なんだかやっぱりぜんぜんわかりませんでしたぁ」というわけにはいかないのであるが、そういう研究書はロジカルで統一感のある漱石のイメージを作り出すために、現実の漱石からはだいぶ離れてしまうという結果になる運命からはどうしても逃れられない。そういう研究本はなんだかエジソンの伝記を読んだみたいな嘘くささが充満していて、結局読んだ後、時間の無駄だったー、という感じがつきまとってしまう。それらの本にくらべると、この本は、とにかく「思い出」というだけあって、思い出したことを単に手当たりしだいゆるく記述しているので、まとまりもへったくれもないかわりに、不思議な現実感が充満している。

この本を手にするのは、どちらにしても自分のように当然かなり漱石に興味を持っている人だと思うが、漱石自身の書いたもの以外でさらに漱石に近づきたいと思うなら、まずこの本をおすすめしたい。もしかするとちょっと意外な内容かもしれないが、そういう点でも面白いと思う。
文豪の妻の苦労話 ★★★★★
”実家に帰れ”、”離縁する”。腹立ち紛れに時に暴力をふるう夫と、静かにしかし頑固に居直る妻。漱石にとって鏡子夫人は、憎らしくも頼もしい、肝っ玉かあさんだったのかな。出て行けと叫びながら、7人もこどもをもうけた夫。原稿料を横取りするも、漱石の信奉者たちの借金に応じ、世話を焼き、決して夫に恥をかかせなかった妻。生まれも育ちもよい上品なインテリ夫婦のわりには、庶民的な派手な喧嘩もあり。森茉莉えがく鴎外の家庭と比較すると、面白い。やっぱり、らしいなと納得。
人間・夏目漱石 ★★★☆☆
文豪・夏目漱石。彼の、夫としての顔、父親としての顔、そして
人間としての顔はどうだったのか?妻の夏目鏡子さんが語り、
長女筆子さんの夫である松岡譲さんが文章にまとめた作品。

誰よりも一番身近にいた人だからこそ語れる漱石の日常。作家と
してではなく、一人の人間としての姿が鮮やかに描かれている。
精神的な病や胃病に悩みながらの作家生活、夫としての顔、父親と
しての顔、そして漱石を慕う多くの人たちとの交流など、どの話も
興味深いものばかりだった。そこには人間臭い漱石がいる。気難しく
怒りっぽい人だとばかり思っていたが、温かく思いやりがあり、細かい
ところに心配りをする繊細な一面もあったのだ。漱石の死因は胃潰瘍だが、
現代の医学ならそれが原因で命を落とすことはないだろうと言われている。
早すぎる死がとても残念でならない。
妻から見た漱石 ★★★★☆
作家の妻が家庭での夫の姿を率直に語るとき、それはしばしば夫の崇拝者たちを驚愕させ、怒らせる。
(30年ほど前、高橋たか子さんが『高橋和巳の思い出』を上梓したときもそうだった)
この『漱石の思い出』も発表当時は賛否両論、随分かまびすしかったらしい。
偉大な文学者のすべてが家庭で困った姿を見せるとは限らないが、ある意味での心の深さ、
闇といったものを抱えていないと、優れた文学は生み出せないものかもしれない。

この『漱石の思い出』には鏡子夫人の見た漱石の姿が、ときには赤裸々に、ときには愛情をこめて極めて率直に綴られている。
漱石の生い立ち、交友関係、修善寺の大患の顛末など、いずれも夫人でなければ語れなかった貴重な証言が多い。
特に当時の読者を驚かせたのは、漱石の精神状態に関する記述だろう。
精神の不安定なときの漱石の言動は明らかに常軌を逸しており、同居していた家族の苦労はいかばかりだったことか。

とかく「悪妻」呼ばわりされる鏡子夫人だが、実際家で文学的感性など持ち合わせていない夫人と
極めて聡明・鋭敏な漱石の間に衝突が生じるのは当然過ぎるくらいで
「朝寝坊」「炊事嫌い」といった欠点だけ見れば悪妻かもしれないが、
夫の病気や不安定な精神に耐えながら、門下生の世話をするなど良く支えてきた部分も多く、
漱石の姿ばかりでなく夫人の人間性まで浮かび上がってくる好著だと思う。

小説よりも現実は面白い ★★★★★
「坊ちゃん」「我輩は猫である」などユーモアある作品を書いている漱石だが、妻鏡子の目から見た姿、少々とぼけた会話などが非常に面白く、何度でも読み返したくなる本。「鏡子夫人は悪妻だった」という伝説(?)もあるようだが、果たしてそれはどうなのか・・・。夫が度々起こす神経症の発作を乗り越え、子供たちを育てあげ、長年連れ添ったからには、簡単に「悪妻」とはいえないであろう。

「やっぱり、わたしはお父さま(漱石)が一番いいねぇ」という老いた妻鏡子の言葉に大きく心をうごかされる。そう思わせる夫漱石もさることながら、夫の欠点も含むすべてをいとおしく思う「母のような妻」は、そんじょそこらにいるものではない。

このひと言は、人生の終わりをむかえた女性全てが憧れる言葉ではなかろうか?。