可愛らしいタイトル
★★★★☆
小説としては王道の雰囲気だと思いました。
読みやすかったです。(もちっと漢字を使ってくれるともちっと読みやすかったです)
十いくつの女の子が数学に長けている、という設定は時代物にはなかなか面白そうな。
算数自体好きではないのでどんなものかなと読んでみた次第です。
万葉集などの歌集にも九九が使われていた、という部分に興味を惹かれました。
難しくはないお話だし、メディア化には良さそうな題材やキャラクタですよね。
ヒロインのあきにはもう少し大きくなった大橋望ちゃんで。
ご愛嬌のあるドラマになりそうな。
数学の教科書に載せたらいいのにと思います(笑)
数学界の坂田三吉
★★★★★
まず読み物として非常におもしろい。それだけでなく、物語を読むうちに算法(数学)というもののおもしろさ、奥深さに自然と気づくようにできており子供向けの小説として良書といえるだろう。もちろん大人が読んでもおもしろい。学問は実生活に役立てお金を儲ける助けにもなるが、それはあくまでも付帯的結果である。人間は本来、真理を追い求め、少しでもそれに迫りたいと希求する存在である。人は常に真理に飢え学問を修める。その一番根源的な姿がこの本に描かれている。つまり、知的好奇心を満たすことは「この世とは別世界のような楽しみを持つこと」すなわち「壺中の天」(こちゅうのてん)なのだと。
主人公が一介の町医者の子供であること、それも封建時代における女であることがこの物語を面白くしているといえるだろう。身分が低く、取るに足りないものとして扱われる市井の者が、身分の高い武士や権威を振りかざす学者の鼻をあかす。それも物事の中心は江戸だとふんぞり返り、上方のものを歯牙にもかけない態度の江戸人を上方の学問が打ち負かす痛快さは『王将』の坂田三吉にも似たものがあり、私のような庶民はやんややんやの拍手を送るのである。
ちなみに『算法少女』という書物はこの小説以外に同じ題名で実在しているらしい。安永4年(1775年)に刊行され、現在では国立国会図書館に収められているようである。著者は「壺中隠者」となのる父とその娘。著者「壺中隠者」の正体については長く不詳のままだったが、後に数学史家・三上義夫の研究によって医師千葉桃三であることが明らかになったようだ。遠藤寛子氏の小説はこの史実に基づいて書かれている。
ただひたむきに信じること
★★★★★
江戸時代にも算数好きの少女がいた!
数学好きの女の子が、社会のくびきも、身分の差も、経済的な問題も、数学に向けるひたむきな思いを旨に様々な難問を解決していく、子ども向けの書なので、理科好きの女の子が読むと元気が出てくるでしょう。
和算の知識は全くなく、読みましたが非常に面白かった。
日本の九九の起源が万葉集の頃にさかのぼること、円周率はかなり早い段階で、3.2ということまでは知られていたこと。
ピタゴラスの定理も勾股弦(こうこげん)の定理として知られていたこと等を知りました。
著者は、江戸期の実在の算法書”算法少女”をヒントにこの作品を仕上げています。
さらに、同時期の様々な著名人を登場させ、当時の江戸の雰囲気を感じさせてくれます。
よい本と思います。
読みやすくて面白い
★★★☆☆
児童文学だけあって読みやすい。
読み仮名が丁寧にふられているのも嬉しいです。
江戸時代の数学、和算をめぐって町医者の娘あきが活躍。
控えめで思慮深い主人公は、けっこう負けん気も強かったりして、最後には凄いことをやってのける。
周りの大人をしっかり見て、話を聞き、自分の考えを確立してゆく過程がしっかり描かれています。
実在の人物と架空の人物が入り交じり、若い読者がある日どこかで、登場人物の名前を見つけるのが楽しみ、と作者は言います。
これこそ読書の醍醐味、と言う作者にとても好感を持ちました。
本当にそう思う。
大人になって児童文学を読んでも、子ども時代に得られる感動は絶対味わえないのは残念だけれど。
でも自分が子どもの時にこの本を与えられたら、はたして読みきれただろうか?
ちょっと自信がありません。
想定外のおもしろさに満ちた傑作です。
★★★★★
一度読み始めたら、途中で巻を措くことができませんでした。
当初は、数学の才覚に恵まれた封建時代の町娘が、さまざまな障害をはねのけながら、数学(和算)の魅力に取り付かれ、自らの才能を開花させて行くーーそのような教養小説を、漠然と予想していました。
たしかに、そういった側面もありますが、時代劇定番の、小生意気な武士の倅、正体不明の武士、上京して来た謎の旅人たち、小粋な下町の庶民…などなどが登場して来て、プチ・ミステリーとしても波瀾万丈です。
一部のレビューワーが指摘している通り、たしかにストーリーがこじんまりしている感もありますが、まあ、もともと少年少女向けに書かれたことも考慮すれば、仕方が無いのでは?
ただし、昔の和算の問題などが、思ったより少なめで、数学の教養書として読むとすれば、若干、物足りないかもしれません。
ただ、古今東西/老若男女を問わず、人類が何故「数学」の謎や真理に魅せられるのか、それを鮮やかに描写したという点では、スケールの大小はある物の、サイモン・シン「フェルマーの最終定理」に肩を並べる書物と評価します。
数学を、株や金融で儲けるための実用的な道具だとか、単なる受験の義務だとかしか思っていない親子にこそ、読んで頂きたい物です。