現代版クレーヴの奥方
★★★★☆
古典ロマンスが下敷きにされているというが、
舞台は現代のリセ。
現代とはいっても、ケータイがあまり出てこない。
ヒロインがケータイぎらいという設定だから?
それだけでもないらしい。
制服はなし。
だから、長すぎるマフラーとかブロッコリーみたいな頭とか、ファッションはばらばら。
文房具もそれと似ていて、みんな色んなペンを使う。
男子のくせに、授業中、手紙を回したり。
ケータイの代わりに手紙がよく登場する映画。
オリヴェイラの『クレーヴの奥方』(原題:『手紙』)へのオマージュかもしれない。
外人の書くアルファベットは信じられないくらい下手くそなことが多いのに、
映画館で拾うラブレターの筆記体はまねしたくなる。
転校生ジュニーはオットーとつき合い出す。
そこに王子っぽい教師ヌムールが入ってきてジュニーにいい寄る。
すでに同僚の教師と生徒に二股をかけているのにもかかわらず。
ジュニーはオットーしか愛していない。
が、オットーはそれが信じられない。
で自殺。
もっとも、ジュニーは「私を信じて」なんて一言もいわない。
オットーは他人の話など聞かなければよかったのだ。
さらに、いざとなったら「平等」も「友愛」も粉々に砕くべきだったのだ。
いや、というよりもむしろ、自殺によってそれをやったのだ。
ジュニーの失踪も同様である。
彼らは、みかけだおしのヌムールのような男にはけっして見ることのできないものを見た。
それはそうと、この監督、あんまり器用な人ではなさそうだ。
ミュージカル・タッチのシーンにしても。
校舎の裏で男女が内緒話するようなシーンにしても。
ただ、ヌムールがジュニーを奪って公園まで走り抜けるシーンだけは、
音楽の使い方も含めて、この映画の白眉ともいえるものだった。
あのときのジュニーの表情には、
あの「倫理性の蒙昧」のようなものを感じた。
どういうことなのか。
複雑な恋愛関係。絶妙な心理描写を表現した俳優たちの表情が美しい
★★★☆☆
転校してきたミステリアスでどこか物悲しげな雰囲気を持つジュニー(レア・セイドゥ)。男たちが彼女に興味を向けたのはあっという間。その中でジュニーと付き合い始めるのはおとなしい青年オットー(グレゴワール・ルプランス・ランゲ)。しかしイタリア教師のヌムール(ルイ・ガレル)にも恋心を抱かれることとなる。二人の男性から激しく愛されるジュニー。どちらにも一途になれなかったのか、それとも二人とも愛してしまったのか、または恋に対し真剣になれなかったのか。混乱し悩み続ける絶妙な心理描写を描く。その心の内を見事なまでに演じているレア・セイドゥの素晴らしい表情が目に焼き付いて離れず、映画の中に吸い込まれます。
88分の時間を通して様々な出来事、事件を通しながら、主軸は学生同士の恋に教師が介入してくるという複雑な三角関係で恋愛の難しさ、辛さ、苦しさを克明に映し出す。言葉の喋り方の起伏は無く、淡々としています。ひたすら出演者の表情で感情を物語ります。そしてその演技力に感動しました。