但し、乱歩の初期の本格推理は犯罪が起きてそれを警察又は私立探偵が捜査するという常套的なストーリー構造を持っていないものが結構多いです。『一枚の切符』などもある人物が別の人物に逸話を紹介するという構成になっています。この辺りが現代の推理小説を読み慣れた人には勝手が違うと感じるかも知れない点です。尚、タイトルとなった『算盤が恋を語る話』はこの時期の乱歩作品の中では異色作と呼べるもので、内容もタイトルも魅力的ですが表題作にふさわしいかどうかはちょっと疑問です。